チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2014年2月14日

5日焼身のパクモ・サムドゥプ死亡確認 焼身に厳しい連座制で答える当局

Pocket

imageゾゲ県人民政府が発行した16項目に及ぶ焼身に関する規定通知書(チベット語版)。

RFAによれば、2月5日にアムド、ツェコク県ドカルモ郷で焼身したパクモ・サムドゥプ(29)の死亡が確認された。パクモ・サムドゥプはおそらくその日の内に死亡し、当局により火葬された後、次の日に家族に遺灰が渡されたという。当局は家族に遺灰をマチュ川に流すよう命令した。

パクモ・サムドゥプが焼身して8日後の昨日2月13日にはンガバでドルジェが焼身した。このように連続して焼身が起るのは半年ぶりである。これから3月10日にかけ焼身が増えなければ良いがと懸念する。

当局がこの焼身抗議に対する対策として昨年中に発表していた、焼身者を出した家族や僧院、村に対する罰則を定めた2種類の通告書の存在が最近亡命側に伝わった。

一つはンガバ州ゾゲ県の人民政府が発行したものであり、昨年4月8日頃より県内各地に張り出されたという。この情報は最近インドに亡命したタムディン・キャプによりもたらされた。ゾゲでは2012年11月から2013年7月の間に9人のチベット人が焼身抗議を行った。当局はさらなる焼身を防ぐ方法は彼らの訴えに耳傾けるのではなく、さらなる弾圧強化あるのみと判断したらしく、厳しい連座制を導入している。立憲国家の内、紛争地帯以外で、この21世紀になっても連座制を敷く国を私は他にしらない。

The-Notice-against-Self-immolation中国語版。

16項目からなるこの通告者は漢語とチベット語で発表された。漢語はウーセルさんのブログに書き出されたものがある。チベット語はTibet Timesが書き出している。ここでは、その内容の要旨をお伝えする。

まず焼身者を出した家族を直系家族:父母、配偶者、子供、兄弟姉妹と規定し、彼らは「政府援助の機会、就労機会を奪われ、如何なる公職にも就けない」という。さらに「これまで受け取った政府援助は3年遡ってこれをすべて返さなければならない」。これは焼身者を出した村に対しても同様で「焼身者を出した村は3年以内に政府から得た援助金を返納しなければならない」。また家族は「耕作地その他の土地を取り上げられ」「外国やラサには3年間行けない」とされる。

焼身者を出した僧院には「厳しい再教育が課され、宗教行事が制限され、1万元から50万元の罰金が課される」。またその僧院の「管理委員会の職員は昇進の機会を失う」と規定される。

一方で最後の16条には「焼身を計画している者やその他焼身に関係する情報を当局に伝えたものには2千元から50万元の報酬が与えられる」とし、「秘密は守られる」と付け加えられている。

もう一つの通告書は昨年12月19日、甘粛省甘南州サンチュ県アムチョク鎮の路上で僧ツルティム・ギャンツォ(43)が焼身抗議を行った後、当局が張り出したというものである。

2712b2これは「四つの厳禁事項」と名付けられており、こちらは連座制を規定したものではなく焼身時やその後にやってはならない項目を上げ、そのようなことを行った者は罰せられると定めるものだ。

1、焼身現場に集まり、遠巻きにしてはならない。
2、僧侶は焼身者のために追悼会や祈祷会を行ってはならない。
3、焼身者を出した家を弔問したり、香典を持って行ってはならない。
4、焼身者の遺体を一般人が運んだり保持してはならない。

習近平政権はチベット人の命を掛けた焼身抗議に対しても、全く時代に逆行する非人間的な厳しい連座制をもって答えることしか知らない。伝統的葬儀さえ禁止している。焼身者の訴えを完全に無視し、力で押さえ込む政策は、一時的に焼身の数を押さえる効果が有るかも知れないが、短期的にも長期的にも、チベット人の政府に対する不信感、反感、憎悪を増長するばかりであり、亀裂は深まり、問題は大きくなり、チベット人をさらに極端な道に追いやるものである。

習近平政権はチベット人だけでなく、ウイグル人や穏健派漢人知識人さえも、共産党に逆らう者すべてを恣意的に、容赦なく処罰している。国内の緊張は高まるばかりであろう。共産党はすでに力のみに頼るという末期的症状を呈している。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)