チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年2月12日
法王がドゥンドゥプ・ワンチェンの子供4人に謁見
2008年の北京オリンピックを前に、オリンピックに対するチベット人の意見を集めたドキュメンタリーフィルム「恐怖を乗り越えて(日本題)」を制作したことで6年の刑を受け服役中のドゥンドゥプ・ワンチェン。
妻ラモ・ツォはこの6年間、世界中を巡り夫の解放を訴え続けている。この2人には4人の子供がおり、全員インドに亡命している。この4人の子供が2月10日、ダライ・ラマ法王に呼ばれ謁見したという。
4人は現在の世話人であるツェリン・トプデンに連れられ、手には2羽づつ折り紙のツルを持っていた。SFTの発案で最近、この折り紙のツル(折り方は猶用指導ではあるが)は「ドゥンドゥプ・ワンチェン解放運動のシンボル」になっている。
法王は側近からドゥンドゥプ・ワンチェンの現状について説明を受けた後、一羽のツルを受け取られた。そして、2人の息子:タシ・ツェリン(20)、テンジン・ノルブ(18)と、2人の娘:テンジン・ダドゥン(16)、ラモ・ドルマ(14)に「よく勉強するように。将来が良きものとなるよう祈ろう」とおっしゃったと伝えられる。
ドゥンドゥプ・ワンチェンの解放は間もなくと思われる。本来なら逮捕された2008年3月26から数へて6年目である、今年3月25日に解放されるべきであるが、中国では拘留中を刑期に含めたり含めなかったりする。情報によれば、裁判所は彼の解放を6月5日と決定したという。
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ドゥンドゥプ・ワンチェンは最近、刑務所内でどのような状態にあるのであろうか?最近ラモ・ツォとスカイプで話しをする機会があった。彼女によるとドゥンドゥプ・ワンチェンの状態は悪くもなく良くもないそうだ。
彼女は現在サンフランシスコにいて、お年寄りの介護の仕事をしながら夫との再会を心待ちにしている。解放されたのち渡米できるよう助けてくれと米政府にすでにお願いしているという。しかし、解放されたとしても外に逃れるのは簡単ではないと思われる。
最近、EU議会の有志議員たちが「恐怖を乗り越えて」の映写会を行い、彼の解放を求める声明を発表したという。その他、ラモ・ツォは今でも様々なチベット支援イベントに呼ばれ、夫の解放を訴え続けている。
私はラモ・ツォにこう言った。「とにかく今はドゥンドゥプ・ワンチェンが無事に解放されることが一番大事なことじゃないだろうか?解放まで、活動を控えて静かにしているほうがいいと思うが、、、」と。ラモ・ツォもそう思っているらしいが、呼び出されると、行かないわけにはいかないのだという。
ダラムサラにいて子供たちの面倒を見ていたラモ・ツォの姪ワンモもオーストラリアに移住してしまい、今はワンモの旦那である今回同席したツェリン・トプデンが面倒を見ている。彼も近いうちにオーストラリアに行く。早く子供たちをアメリカに呼び寄せたいと思っているようだが、資金の問題もありなかなか思うように行かないようである。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)