チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年2月5日
ディルで再び拷問死 87年以降のチベット人政治犯拷問死は100人以上?
ディル県で鉱山開発に反対し集まったチベット人たち。鉱山開発に抗議すれば政治犯として逮捕される。
2月3日付けRFA等によれば、チベット自治区ディル県で鉱山開発に抗議するデモに参加し、去年12月中に拘束されその後行方不明になっていたチベット人若者が、1月20日頃に拷問死していたことが判明した。
拷問死したクンチョク・ダクパ(དཀོན་མཆོག་གྲགས་པ།20歳前後)はディル県ディル郷ツァムラム村の出身。彼は去年5月末、ディル県ダタン郷に聖山ナクラ・ザンバラをえぐる鉱山開発に反対するため数千人が集まった時、指導的役割を担っていたとして逮捕されていた。その後、彼がどこの拘置所に収監されていたのか明らかではないが、1月20日頃、拘置所内で拷問死し、遺体が家族に引き渡されたという。
ディルでは去年12月17日にも拘束されていたガワン・ジャミヤンという高僧が拷問死している。
チベット民主人権センター(TCHRD)の集計によれば、1987年から2005年までにチベット人政治犯87人が拘置所又は刑務所における拷問により収監中或は解放後間もなくして死亡しているという。2006年以降の集計がないが、2008年以降拷問死のケースは増加している。現在までに100人以上の政治犯が拷問死していることは間違いないであろう。
同じくこの鉱山開発に反対したとして拘束されたチベット人の内、人気歌手ティンレー・ツェカルに9年の刑、チュキャプに13年の刑が言い渡されている。
また、去年9月末頃からディル県では愛国高揚キャンペーンが始められ、これに反発するチベット人の抗議デモも頻発している。去年10月8日にはダタン郷シャリ村で、当局の五星紅旗を掲げさせる等の愛国教育に抗議し村人たちがデモを行い、これに対し部隊が発砲、3人が被弾・死亡している。
チベット自治区内で特に政府に対する抵抗意識が高く、焼身抗議者も出ているディル県を当局は重点的に弾圧している。デモに対する無差別発砲も数カ所で起っている。ディルの住民に対して当局は冬虫夏草の採集を2年間禁止し、子供の修学にも制限を加え、移動を厳しく制限している。また、複数の僧院が閉鎖されている。さらに、ラサに住むディル出身者やディル出身者は特別監視対象とされ、拘束者が続出している。
最近ディルからの情報が途絶えているが、これは長期に渡り情報網が遮断されていることが原因と思われる。
その他参照:VOT2月3日放送分(チベット語)
同中国語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)