チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年1月24日
チベット人の移動の自由が奪われていると訴えるケンポ・カルツェ 彼の解放を求める署名活動始まる
ナンチェン、チャパ僧院の高僧ケンポ・カルツェが成都で連行され、すでに1ヶ月半以上経つ。チベット自治区チャムド(昌都)で拘束されていると言われる。
ケンポ・カルツェは拘置所内から弟子や信者に対し「「私は今、チャムドの拘置所にいる。殴られるとか衰弱しているとかいうことは全く無い。だから、僧院の僧侶や地域の住民も必要以上に心配しないでほしい」等と書かれた手紙を送っている。しかし、最近現地からRFAに寄せられた情報によれば、彼は肝炎を患い憂慮すべき状態であるという。
家族は彼に薬、衣服、食料を渡すためにチャムドに向かった。拘置所側は彼に渡すと約束し、薬のみを受け取ったが面会は許可されなかった。弁護士の面会も許可されていない。家族や地元の人々は彼の容態を非常に心配している。
去年12月中に彼の解放を求めて抗議デモを行い拘束された16人のチベット人は何回かに分けて解放され、1月21日には最後に残っていた人たちも解放されたという。
チベット人の移動の自由が奪われていると訴えるケンポ・カルツェ
写真はすべてウーセル・ブログに発表されていたケンポ・カルツェが雪山を越える時の様子を写したもの。
ケンポ・カルツェは逮捕される1ヶ月半ほど前に、チャムド地区のある場所で法要を営むことを頼まれた。しかし、他省のチベット人が許可なくチベット自治区内に入ることは許されていなかった。彼は通行許可を申請したが回答を得ることはできず、仕方なく雪の中を山越えし、現地に向かった。
彼はこのときの話しを写真と文章で発表し、これをウーセルさんが自身のブログに掲載された。ケンポ・カルツェは「自分は何も罪を犯していないのに、こうして逃亡者のように雪山を越えなければならない」といい、多くの他の罪のないチベット人が同じように山越えを行わざるを得ないという苦境を訴えている。
国道上に儲けられた検問所を通過するときには地元のチベット人でない限り、理由もなく日常的に暴力を受けるという。
ケンポ・カルツェは「このようにチベット人に移動の自由が与えられていないということに対し、上級の指導者や幅広い世論に関心を抱いてほしい」と訴えている。
その他参照:1月22日付けRFAチベット語版
ケンポ・カルツェの解放を訴える署名活動
アムネスティ・インターナショナルはケンポ・カルツェの解放を訴える活動をはじめている。
追記:日本語訳はこちら。
またSFTも彼の解放を訴える署名活動を始めた。署名のためのサイトはここ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)