チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年1月7日
カルマ郷:チベット人の団結を訴え、文盲をなくす活動を行ったとして9人拘束
チャムドを示すチベット語の地図。カルマ郷はチャムドの北、黒線で示された青海省との省境近くにある。青海省側にあるナンチェンと非常に近い。
1月6日付けRFA英語版によれば、焼身や爆弾事件等のあったチベット自治区チャムド地区カルマ郷で、こんどはチベット人の団結を訴えたり、文盲撲滅のためにクラスを開いたものが連行されたという。
今年に入りカルマ郷に大勢の警察や部隊が投入され、家々に押し入り、家宅捜査を始めた。そして、1月3日にプンツォク・ナムギェル、ペマ・ツルティム、ドルジェ・ロトゥの3人、1月5日にはバルロ・ユンドゥン、ダンマ・タトップ、ゴラ・タシ・ナムギェル、ダツァ・ドルジェ・リクジン、ディプヌップ・ソナム・ニマの5人が連行された。
彼らが連行された理由は明らかではないが、地元の人々は「彼らはみんな、かねてより、チベット人同士でケンカすることを止め、チベット人の団結を促す活動を行っていたからではないか?」という。
地元の警察は「チベット人団結運動を行ったものは出頭せよ」と広報した。命令通りに出頭した者の内何人かは暴力を受けたという。
また、最近、カルマ郷ラル村で文盲をなくすクラスが始まったが、中国当局はこのような活動は違法だといい、責任者を拘束し、クラスを閉鎖したという。
先の連行された8人の内には、この文盲をなくす活動にも関わっていたものがいたと言われる。
最近成都で拘束されたナンチェンの高僧ケンポ・カルツェは、このカルマ郷にあるカルマ僧院との関係を問題にされ、現在チャムドで拘束中と言われる。今回の一連のチベット人拘束はケンポ・カルツェとの関係があるかも知れないという人もいる。
何れにせよ、この数年、カルマ郷とその中心をなすカルマ僧院が当局の弾圧の特別対象になっていることは間違いない。
それにしても、「チベット同士ケンカせず団結しようと訴えたり、文盲をなくす活動を行うことは違法である」というのが今のチベットということだ。
その他参照:1月6日付けRFAチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)