チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年12月20日
ツルティム・ギャンツォの遺書『涙 金の雫』全訳
昨日19日、アムド、サンチュ県アムチョク鎮でツルティム・ギャンツォが焼身・死亡した後、遺体が運び込まれ法要が営まれていたアムチョク僧院本堂に警官が現れ、法要を中止させた。しかし、僧侶たちは他の場所に移り法要を続けているという。僧院は現在部隊により包囲されている。
RFAによれば「焼身の前、僧院の昼食の後ツルティム・ギャンツォは自身の僧房にもどり、灯明を灯し、お経を開き、遺書を綴った」という。
彼の遺書について昨日のブログでは要約のみを紹介し、全文を訳してはいなかった。
以下に、その『涙 金の雫』と題された遺書全文の日本語訳を載せる。
彼の悲痛な叫びが直接伝わってくる遺書である。
涙 金の雫
ああ! 涙
親愛なる兄弟よ
あなたには聞こえるか?
あなたには見えるか?
あなたには分かるか?
一体誰に向かって、この600万チベット人の苦しみを訴えるべきか?黒い中国の裁判所は横暴をきわめ
チベットの金銀は根こそぎ奪い去られ
すべての人々は苦しみに追いやられる
これらのことを思えば 涙こぼれる宝に等しい我が身を火に捧げる力により
ダライ・ラマ法王が祖国にお戻りになることができますように
パンチェン・リンポチェ(テンジン・チュキ・ニマ)が解放されますように
600万チベット人が幸せになりますように
私はこのために我が身を火と化し供養するこの力によりすべての三界の有情が
三毒(貪・瞋・癡)により引き起こされた苦しみから解放され
菩提の道へと進まんことをラマ、三宝(仏・法・僧)よ照覧あれ
誰からも助けられずにいる人々を守りたまえ
雪山チベットの兄弟・姉妹よ ずる賢い者たちに注意し 団結せよ雪の国の闘士 ツルティム・ギャンツォ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)