チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年12月9日
ディル:人気歌手2人拘束
緊張が続くチベット自治区ナクチュ地区ディル県で、こんどは相次いで地元出身の2人の人気歌手が当局により拘束され、行方不明になっているという情報が入った。
ティンレー・ツェカル(འཕྲིན་ལས་ཚེ་བཀར།22)が11月20日、ナクチュで拘束され、ゴンポ・テンジン(མགོན་པོ་བསྟན་འཛིན།25)が11月30日、ラサで拘束された。
ティンレー・ツェカルはディル県ディル郷セルカン村の出身。自宅には母と妻、子供がいる。ティンレーは先月20日頃、ナクチュにある自動車学校に車の免許証を受け取りに行った時、突然警官により連行れたという。
連行の理由について当局はなにも明かしてないが、友人たちは彼がチベット人のアイデンティティー、文化、言語等を主題にし、チベット人の真実の苦楽を歌った歌が沢山入ったDVDを発売していたからではないかという。特に、彼の「団結の鐘༼ མཐུན་སྒྲིལ་གྱི་ཨ་ལོང་ ༽ 」というアルバムは人気となっていた。
ゴンポ・テンジン
もう1人のゴンポ・テンジンはディル県シャクチュ郷セプタ村出身。自宅には父母と妻、子供がいる。彼もティンレー同様チベット人アイデンティティー高揚、チベット文化と言語の発揚を説く多くのうたを発表してきていた。特に2008年以降のチベット人の苦境を正直に歌い「雪山チベットに正月などない༼ གངས་ཅན་བོད་ལ་ལོ་གསར་ག་ན་ཡོད། ༽」と題され発表されたアルバムはチベット全土で流行り、ロサ(チベット正月)ボイコット運動に影響を与えたと言われる。
当局はこのアルバムを政治的と解釈し、彼を指名手配した。彼は拘束される前に、ラサ市内を転々としながら、身を隠す生活を強いられていたという。
2008年以降、中国当局はチベットの知識人、文化人をターゲットにして、多くの作家、詩人、映像作家、教育者、歌手等を連行、この内多くの者たちが刑を受けた。10月には同じディル県出身の作家ツルティム・ギェルツェンとその友人が拘束されている。
参照:12月6日付けRFA英語版
12月6日付けTCHRDリリース
12月6日付けTibet Timesチベット語版
12月6日付けTibet Expressチベット語版
12月6日付けphayul
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)