チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年12月6日
3日焼身のクンチョク・ツェテン 死亡 内地106人目
12月3日にンガバ州ンガバ県メルマ郷中心街マーケットの路上でマチュ県出身の遊牧民クンチョク・ツェテン、30歳、2児の父が焼身抗議をおこなった、ということは先にお伝えした。
焼身者を取り囲んでいたチベット人たちが阻止しようとしたにも関わらず、部隊はクンチョク・ソナムを車に入れ、バルカムの病院に向かった。が、「その途中で彼は死亡した」と、当局は言う。
現地と連絡を取った在インドチベット人ラモ・キャプが、RFAに彼らの話しを伝えたところによれば、「昨日(12月3日、水曜日)警察と武警を代表するという者から、焼身者クンチョク・ツェテンの妻の親戚の下に連絡が入り、彼が死亡したと告げられた」といい、「その親戚は一握りの灰を片手に渡され、何の詳しい説明もなくただそれがクンチョク・ツェテンの遺灰だと言われた」という。
「遺灰というものを渡された親戚は、何も見ておらず、ただ、言われた通りにそれをクンチョクの遺灰だと信じるしかなかった」という。
警官は「クンチョクはバルカムに運ばれる途中で死亡し、その後すぐ火葬した」と説明したという。
クンチョクの妻と数人の親戚は当局により拘束されたまま、依然行方不明という。
彼の焼身は内地123人目、その内死亡確認106人目。内外合わせて128人目、内死亡109人目。
チベット亡命政府スポークスマンであるタシ・プンツォクは亡命政府公式ネットの中で、「内地のチベット人たちは厳しい弾圧の下に暮らしている。彼らの苦しみを訴える普通の道はすべて閉ざされている。このような状況が増加する焼身抗議の原因なのだ。中国指導部がチベット人たちの苦しみの声に耳傾けることを要請する」と原因は中国政府によるチベット人弾圧であるとし、中国指導部に聞く耳を求めている。
続けて「政治的弾圧、文化同化政策、社会差別、経済差別、環境破壊、そして宗教の自由がないことがチベット人を焼身に追いやる主な要因である」と分析し、「チベット亡命政府は常にチベット人に対し抗議の方法として焼身のような過激な方法を選ばないようにと訴え続けている。非難されるべき側であり、またこの問題を解決できるのも中国政府である」と結ぶ。
その他参照:12月5日付けTibet Times
12月5日付けRFAチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)