チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年11月29日
当局に盗まれた聖なる石を戻してくれとたのみ9人逮捕
11月28日付けRFA等によれば、11月22日に四川省カンゼチベット族自治州ペユル県テルルン郷に大勢の部隊が押し寄せ地元のチベット人9人(Tibet Timesによれば8人)を逮捕した。
ことの発端は、ある石(複数?)。地元の人々は、祖先から言い伝えられるままに、ある僧院の境内に置かれていた(あった)石を聖なる石と見なし崇め続けて来た。この特定の石を崇めるということは、元はボン教的感覚からくるアニミズム的傾向の現れと思われ、チベットだけでなく世界中で見られる現象である。
数ヶ月前に、何を思ったのか中国当局が人を送り込み、ニンマ派のカンマル僧院の境内にあった、それらの聖なる石をごっそり運び出したのだ。これをチベット人たちは「盗まれた」と表現している。この部分、Tibet Timesでは石の数が明記されておらず、最初は写真からして普通に1個の大きな石かなと思っていたが、RFAでは「沢山あった石をごっそり持って行かれ」と書かれているから複数ということになる。
この石を政府は半分中国内に売りさばき、幾つかは現在建設中の県庁舎入り口付近に(何かとして)使われているという。
これに対し、地元の人たちは当たり前に怒り、この石を返してくれと、これまでにも何度も書面を当局に提出、要請したが、全く当局は相手にしなかったという。これに業を煮やし、地元の人たちは11月23日に、この郷の下にあるすべての村人を集め県庁舎まで向かい、そこで大きなデモを行うことを決めていた。
しかし、この秘密であるはずのデモ計画は当局に知れてしまった。デモの前日である22日の夜、主立った人たちが準備のために集まっていた場所を、大勢の部隊が急襲したのである。RFAによれば、衝突もあったという。その結果Tibet Timesによればテルルン僧院の僧侶6人と地元の代表2人の合計8人が連行されたという。RFAは合計9人という。
この事件の後、付近の僧院、村々には大勢の部隊が押し掛け、厳しい監視が続いている。
中国では今も、政府は泥棒し放題なのでしょうかね?それとも中国の法律では「聖なる石」は「だたの石」だから泥棒したとはいえないのかな?それでもその石を誰かが売ったらしいから、何か経済的価値を認めていたらしい?そうだとすれば、盗んだと言えるわけだ。日本ならある地域レベルであろうと、有名な聖なる石を盗んだとなると大変なことになるであろう。
それにしても、この当局により盗まれたチベット人たちが崇める聖石を、返して欲しいと要求するだけで、逮捕されるわけだ。彼らは早くも平和的デモをやる前に(泥棒たちの部隊により)逮捕されている。まだ何もしてないのにだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)