チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年11月25日
焼身に関わったとして7人拘束
24日付けRFAによれば、青海省ゴロ州ペマ県当局は最近、先の11月11日にペマで焼身・死亡したアキョン僧院僧侶ツェリン・ギェル(20)の焼身に関わったとして7人を拘束した。
「ペマ県では焼身の後、厳しい監視が続いており、そのせいもあり7人の氏名等は未だ分かっていない」「しかし、拘束されたことは確かで、3人はアキョン僧院の僧侶、4人は俗人である」と現地から報告されている。
僧ツェリン・ギェルが焼身した後、ペマ県一帯に大勢の武装警官隊が投入され、厳重な警戒が続いている。あらゆる交差点に10人以上の部隊が立ち、チベット人を厳しくチェックし、アキョン僧院では僧侶に対する尋問が続き、僧ツェリン・ギェルの家族の家も監視され、誰も弔問に行くことができない状態という。
中国当局は焼身抗議が発生するたびに、ほぼ必ず誰かを逮捕する。チベットの焼身はほぼ100%個人的決心により実行され、焼身の前に誰かに明かされることもまずない。その意味では家族や友人は全く関係がない。そうであっても、当局は連帯責任を負わせ、1人が焼身すれば多くの人も逮捕されるぞということを見せつけるために、友人や家族を逮捕する。
この逮捕は焼身中に焼身者が部隊に運ばれることを阻止した者とか、焼身者の遺体を家族に届けた者とか、法要を行った、弔問したというだけでも逮捕の対象となり得る。焼身を唆したとされた僧侶に死刑判決も出ている。
今回、僧ツェリン。ギェルは病院に運ばれる途中で亡くなっている。当局は珍しく遺体を素直にチベット人側に引き渡し、法要を許可している。これは、通常の遺体を家族に渡さず、勝手に焼却したのち遺灰だけを家族に渡すという非常に非人間的なやり方に比べれば、一見当局の温情ともとれるやり方ではある。しかし、見方によれば、当局は当初こうした法要などを許しておき、その法要を見守ることで、その中心になった者たちを見定め、後に彼らを逮捕するためにそうしたのだ、と言うことも大いにあり得ることなのだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)