チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年11月23日

焼身抗議に関連しザムタン・チョナン僧院僧侶に4年半の刑

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ホルツァン・タムディン11月22日付けTibet Timesの中、在ダラムサラのツァンヤン・ギャンツォが伝えるところによれば、最近四川省ンガバ州ザムタン県の裁判所はチョナン僧院ツァンパ学堂の戒律師ホルツァン・タムディン(ཧོར་གཙང་རྟ་མགྲིན།)に4年半の刑を言い渡した。

ザムタンでは2012年中に6人が相次いで焼身抗議を行っている。僧ホルツァン・タムディンは焼身者の葬儀が行われる度に指導的役割を担い、焼身者たちの遺言である「チベット人団結」を訴え、これを提唱する人たちは「雪山チベット人が讃えるべき人々」であると言ったという。このような言動から中国当局は彼を「祖国分裂を煽動し、チベット独立を唱えた」と見なし、4月24日に彼を拘束していた。

僧ホルツァン・タムディンはザムタン県バルマ郷ツァンデ村の出身。彼はチョナン僧院ツァンパ学堂の戒律師であった。

彼は「慈悲基金」という協会を創立し、地域の身体障害者、孤児、病人、貧困者などを援助する活動を行っていた。この協会の宣伝、資金集めのために中国本土各地に赴き講演会等も行っている。

foundation_for_a僧ホルツァン・タムディンが大連に行き慈悲の心を奨励する集会を行っているという写真。

また、彼はタンカ(チベット仏画)の絵師でもあり、中国本土でタンカの展覧会を何度か開いていた。さらに、彼は著作も行い、「3月10日(蜂起)記念日への思い༼གསུམ་བཅུའི་དུས་དྲན་ཉིན་གྱི་སེམས་ཚོར་༽」という詩の中で「今日は3月10日(蜂起)記念日だ。心に受けた痛みを思い出す。身体に受けた傷を思い出す。亡くなった同胞の苦しみを思い出す。解放軍進撃の音を思い出す。年輪を重ねた苦しみを思い出す」と歌う。

「ラサへの思い༼ལྷ་ས་དང་སྦྱར་བའི་སེམས་ཚོར་༽」という詩の中では「ラサはどこにあるのか?ラサは危険な場所にある。ラサはどこにあるのか?ラサは他人の手の中にある。ラサはどこにあるのか?ラサは憂慮すべき場所にある。ラサはどこにあるのか?ラサは武装警官の手に落ちた。ラサはどこにあるのか?ラサは監視される場所。ラサはどこにあるのか?ラサは涙の中にある」と歌う。

ザムタン僧院ザムタン僧院。

ザムタンでは焼身に関わったとして、これまでに40人ほどが拘束され、様々な拷問を受けた。その内20人ほどは数ヶ月拘禁された後解放されたが、依然20人ほどが拘束されたままと言われる。ただ、ザムタン全域に渡りすでに8ヶ月以上ネット等の通信手段が遮断されたままであり、拘束者の氏名等の詳細は伝わっていない。

焼身が続いた後、ザムタン僧院には大勢の武装警官隊、警察隊が常駐し、僧侶たちに対し様々な嫌がらせを行い、「僧院で新たな仏像を作ってはならない。最近造った仏像は壊せ」という命令も出ているが、高僧たちが役人に掛け合い、この事態は今のところ回避できているという。

また、当局は「チョナン派は亡命政府により差別され続けて来た。だから、もう目を覚まして中国政府に付くべきだ。それに比べ、先代のパンチェン・ラマはチョナン派を正当な宗派として公平に扱った。このことを思い出し、僧院は今の(中国が認定した)パンチェン・ラマ11世をお迎えすべきだ」と言うが、僧院側はまったく耳を貸さないという。

その他参照:11月22日付けTibet Express チベット語版
11月22日付けRFAチベット語版
同英語版
11月23日付けphayul

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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