チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年11月9日

続く五星紅旗掲揚強要

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中国国旗
チベット民家の上に掲げられる五星紅旗。カム、デルゲ県コルロド郷(写真RFAより、日付不明)。

今日から北京では第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が始まった。先進国を中心に海外ではこの会議で「政治改革」について話し合われるのではないか、というほのかな期待も持たれている。8日付けロイターによれば、このような期待をあざ笑うかのように中国共産党は8日付け人民日報を通じ、「中国は党の指導の下でのみ繁栄できると指摘。『中国の特色ある社会主義』の道を歩み続けると表明し、党による統治を脅かしかねない欧米式の政治システムを模倣することはないとの認識を示した」という。さらに政治改革を求める内外の個人、組織、国を「敵対勢力」と呼び、彼らは「中国共産党の執政党としての地位を否定するために党を悪魔化している」と敵対感、警戒感、嫌悪感を露にしている。

ダライ・ラマ法王は習近平政権に期待を寄せ、「中国は良き方向に向かうであろう、より現実的になるであろう、私は将来について楽天的だ」とおっしゃるが、現実はまさに逆方向に向かっているようにしか見えない。

ウイグル人、チベット人に対しても増々締め付けを強化している。その一環であろうが、最近当局は「愛国再教育」と共に「五星紅旗掲揚強要」という新しいいじめ、嫌がらせをチベット各地で初めている。他民族に「五星紅旗掲揚」を強いることは、つまり彼らに「中国共産党に完全に降参していることを示せ」ということである。

これはまずチベット自治区のチャムド地区で始められた。これに逆らった僧院や村落が厳しい弾圧の対象となっている。今年10月始めには同じく自治区ナクチュ地区ディル県でこの「強要」が行われ、これに反発した村人たちが与えられた五星紅旗をすべて川に投げ捨てるという事件が起こり、これを契機に住民と部隊が衝突し部隊の発砲により、4人が死亡し50人以上が負傷している。ディルでは今も住民の抵抗が続き、多くのチベット人が逮捕されている。

10月13日にはアムド、チェンツァの村で五星紅旗掲揚強要が行われたが、300戸の内15戸のみがこれに従ったと報告されている。

11月8日付けRFAによれば、新たに今週カンゼ州カンゼ県とジェクンド州ザトゥ県でもこの国旗掲揚強要が行われたという。もっとも、両方ともこれに従った人は皆無と伝えられる。

カンゼ県ドンコル郷の住民が木曜日、RFAに伝えたところによれば、「昨日か一昨日からドンコル郷の役人がドンコル郷の住民を集めて、それぞれの民家の上に中国国旗を掲揚することの重要性を説いた」、「しかし、集会に参加した住民は、過去に中国国旗など一度も掲げたことなどないといい、これを強く拒否した」という。

これに対し、役人たちは「他の地域の住民はすでにこれに応じている。従えば、政府からの援助が得られるであろう。拒否すれば、その結果は自分たちにも分からないようなことになるぞ」と答えたという。

鉱山開発を巡り、住民の抵抗が続くジェクンド州ザトゥ県では県政府から「チベット人の家や僧院の上に国旗を掲揚せよ」とう命令書が出されたという。

「これまでは、政府に抗議するデモに参加したチベット人たちの家に国旗を掲げることが強要されただけだった。これからはすべてのチベット人にこれが強要されるのではないかと人々は心配している」「政府職員の家庭や政府から援助を得ている家庭はこれを率先して行うようにと言われている」「しかし、だれもこれに従う者はいない」と現地の住民は報告する。

このままこのキャンペーン?が広がれば、また衝突の原因になることであろう。これも一種の「踏み絵」なのであろうが、ほんとうに問題を増やすのに熱心な共産党である。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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