チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月25日
焼身者の救助を妨害したとして3人に4~5年の刑
在インドの元政治犯ラモ・キャプが現地と連絡を取り明らかにしたところによれば、四川省ンガバ州キュンチュ県の中級人民法院は3人のチベット人に対し、焼身者の救助を妨害し、焼身者を死に至らしめたとして4~5年の刑を言い渡したという。
今年1月18日ンガバ州キュンチュ県ダチェン郷の広場で2人の父ツェリン・プンツォク(別名ドゥプチョク)28歳が、中国のチベット政策に抗議するため焼身、その場で死亡した。
現場に集まったチベット人たちは彼を囲み、祈りを上げながら燃え尽きるのを見守った。裁判所によれば、この時、現場に駆けつけた警官が消火器で火を消そうとしたが、それを3人のチベット人が妨害し、消火器を取り上げたという。
3人とはキュンチュ県出身のグルゴン、ソナム・ヤーペル、ノルブ・ドルジェ。3人とも1月22日に拘束されている。7月半ばに行われた裁判にはキュンチュ県内の各郷の役人と、それぞれの被告の家族が2人づつ傍聴する中で行われたという。その結果、グルゴンとソナム・ヤーペルに4年の刑、ノルブ・ドルジェに5年の刑が言い渡された。
チベット人たちは焼身抗議を目撃したとき、本人の意志を全うするために、彼らが死ぬまで手を出さず、見守ろうとする。死ぬことなく、当局の手に落ちれば、その後行方不明となり、苦しみも多く、家族と面会でない可能性が高い。病院で死んだ時には遺灰のみが家族に渡され、葬儀を行うこともできない。また、命を繋いでも当局のプロパガンダ用に使われる可能性が高く、それは本人の意志ではないことがはっきりしているからだ。
2009年以降、これまでにチベット内地で122人が焼身抗議を行っている。その他、インドとネパールで6人が焼身し、焼身抗議者の合計は128人である。間近の焼身者は9月28日、ンガバ州ンガバ県ゴマン郷 で焼身したシチュン(41)。
中国当局は焼身者をテロリストと呼び、関係者を多数拘束し、懲役刑を与えている。
参照:10月23日付けRFA英語版
同チベット語版
10月23日付けTibet Times チベット語版
10月23日付けphayul
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)