チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月22日
ディル:こいつらは「岩にぶつかる卵のようなものだ」と役人 拘束された同胞の解放を求めた人々を部隊が威嚇 10人逮捕
10月18日、ディル県シャクチュ鎮(འབྲི་རུ་རྫོང་ཤག་ཆུ་གྲོང་རྡལ། 比如县夏曲镇)第4村出身の商人テンジン・ランドル(བསྟན་འཛིན་རང་གྲོལ། 34)が拘束され、行方不明となった。彼は子供を学校に届けた後帰宅する途中、突然警官に連行されたという。
翌日19日、同郷のチベット人約40人が彼の解放を要求するために鎮役場の前に集まった。その内周辺の5つの村からも人が集まり、その数は100人を越えたという。
報告を行ったチベット人によれば、彼らの訴えは以下のようであったという。
「無実であるテンジン・ランドルを解放してほしい。真実を訴え、状況を知らせる場所が全くない。違法だと言って嘘の罪を押し付けないでほしい。やたら住民を苦境に追いやらないでほしい。自分たちは全く分裂をもくろんでなどいないのに、見せかけの法律や権力を役人個人が勝手に利用して政府と民衆の間に分裂を引き起こしている。自分たちがここに来たのは、物を買いに来たのでもなく、物をもらいに来たのでもない、政府に対し、法律を公正に適用してほしいがために来たのである」と。
彼らはその夜そこに留まり続けたが、20日には部隊が彼らを取り巻き、ナクチュ地区やディル県の役人数人がやって来た。ナクチュ地区の高官は「こいつらは岩にぶつかる卵のようなものだ。59年や69年の時のようにしてやる」と集まったチベット人たちのそれぞれの頭に手で銃を撃つ真似をしながら、侮蔑の言葉をわめき散らしたという。そして、その中から10人を連行し、残り全員から指紋をとった。
連行されたチベット人の名前はショダル、ドルギェ・ラモ、ケルサン・ナムドル、メンギェル、サンモの息子、等。
地域には部隊が大勢配備され、住民の移動を禁止し、電話等の通信網も遮断された。
参照:10月21日付けRFAチベット語版
10月21日付けTCHRD英語版
10月21日付けVOT中国語版
10月21日付けTibet Timesチベット語版
10月21日付けTibet Expressチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)