チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月21日
ディルで再び4人拘束 国境なき記者団とアムネスティが非難
新たに連行された左よりダワ・ルンドゥップ、僧ジャンパ・レクシェ、僧ケルナム。
中国国旗掲揚強要で死者や拘束者が続く自治区ディル県で再び4人のチベット人が連行された。このディル弾圧に関連し、国境なき記者団は当局が情報を流したとしてチベット人を逮捕することを非難、アムネスティ・インターナショナルも抗議者に対する暴力的対応を非難する声明を発表した。
10月15日、ディル県シャムチュ郷ヤルディン村から19歳のダワ・ルンドゥップと20歳の尼僧ジャンパが警官により連行された。2人が連行された理由は、秘密の情報を電話やネットを使い外部に伝えたからと言われる。
2人が連行された後、村の長老たちが県の警察所に赴き、無罪の彼らを早く解放してほしいと懇願したが、取り合ってもらえなかったという。
10月17日にはディル県シュクディン僧院の僧ジャンパ・レクシェ20歳と僧ケルナム25歳がラサ市内で拘束された。彼ら2人も外部に情報を流したという理由で拘束されたと思われている。2人とも出身はディル県シャムチュ郷ヤルディン郷。
TCHRDによれば、アムドやカムでも当局は僧院内にディル県出身の僧侶や尼僧がいないかを調査し、彼らを尋問しているという。
先月末から続くこのディル県のチベット人に対する弾圧に関し、アムネスティ・インターナショナルは10月6日付けで「中国:チベット人抗議者に対する警官の『非道な』暴力を止めよ」と題されたリリースを発表した。
この中でアムネスティ・インターナショナルの中国研究員Corinna-Barbara Francisは「平和的集会に向かって警官が発砲することは非道である。この間近の事件は中国当局が保安部隊が過剰な力を使用することを全く抑制せず、チベット人の自由に平和的な集会を行う権利を全く尊重していないことを如実に示している」と語り、「重傷者が治療を受けることも妨害している」と強い口調で非難する。
また「チベット全域に渡り、状況は緊迫したままであり、中国当局はチベット人のもっとも基本的な人権をも否定し続け、全く状況を改善しようとしていない」とコメントする。
国境なき記者団は10月16日付けで「連続する逮捕により、チベットの孤立は増すばかり」と題されたリリースを発表している。
その中で、当局が、ディル県の弾圧状況を外部に伝えたとする多くのチベット人を「社会の安定と祖国の分裂をもくろむ政治的行為を行った」との口実の下、恣意的拘束を行っていることに憂慮を示し、「チベットの劇的な状況を同胞や外国に知らせようとしたチベット人を逮捕することは、地域の孤立・隔離をさらに深めることになる」と述べ、「チベットを情報のブラックホールにしようとする代わりに、中国当局はそのような恣意的逮捕を止め、直ちに拘束者たちを解放すべきである。我々は国際社会に対し彼らの拘束を強く非難すべきことを要請する」と続ける。
「このようなあからさま情報の自由に対する侵害に対し、口を噤むことは如何なる意味においても正当化されない。中国政府はチベット人に対して行っている抑圧的で差別的な政策を非難される時、常に『主権尊重』を持ち出すが、これも口を噤むをことを正当化させるものでは決してない」とコメントする。
参照:10月19日付けTibet Timesチベット語版
10月19日付けTibet Expressチベット語版
10月19日付けVOT中国語版
10月20日付けphayul
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)