チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月20日
ラガンで鉱山より流れ出た鉛水により魚、家畜が大量死 抗議に対し当局は部隊を派遣し威嚇
四川省カンゼ州ラガン県バラン郷では2005年から鉛鉱山の開発が行われているという。
「10月13日頃、バラン郷にある鉱山から毒を含んだ水が流れ出た。それは20~30マイル(32~48キロメートル)に渡り川の水を汚染し、数へ切れないほどの魚が死に、川の水を飲んだ馬、羊、ヤギ等の家畜も沢山死んだ」と現地の人は報告する。
「この毒水は付近の5、6カ所の村の飲料水も汚染した」、「村人たちは死んだ魚を県庁舎の前に運び、当局に訴えた。しかし、当局はこれにまともに答える代わりに部隊を現地に送り込み、地域の電話やネットを遮断した」という。
別の報告者によれば、「当局は県の役人を現地に派遣したが、彼らは『調査には時間が掛かる。その内上級機関が何か決定するだろう』と言っただけだ」という。
この鉱山は2005年に「道路を作る」という口実の下に始められた。当初から村のリーダーたちはこの鉱山開発に反対していたが、「県の役人や請負業者は『この計画は党と県の意志であり、これに異を唱えれば重大な結果が待っているだろう』と脅していた」という。
2011年にも同様に多くの魚や家畜が死ぬという事件があり、村人たちは政府に訴えたが、何の効果ももたらさなかった。
今回も訴えに対し当局は何も具体的な方策を提示することもなく、脅しのために部隊が送り込まれ、鉱山開発は続けられていることに対し、村人たちは非常に落胆しているという。
チベット全域に膨大な量の様々な鉱物資源があることは調査により知られている。中国政府は急ピッチで鉱山開発を進めている。住民の意志や利害を完全に無視したこれらの開発は、度々これに反対する地元の住民と衝突を引き起こしている。抗議が起る度に当局は話し合いを行う代わりに、部隊を派遣し、時には住民に対し発砲し、死者がてでも開発を続けるという強硬姿勢を見せている。
参照:10月18日付けRFA英語版
同チベット語版
10月19日付けTibet Expressチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)