チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月15日
ペユル(白玉):拘束された僧侶の解放を求め公安前に数百人
10月12日、カム、カンゼ州ペユル僧院(དཔལ་ཡུལ་བཤད་གྲྭ)の僧ケルサン・チュダル(སྐལ་བཟང་ཆོས་དར།)が拘束された。これを知った当僧院の僧侶が全員彼の解放を求め公安の前に集まった。その内、他の僧院僧侶、尼僧、一般人も集まりその数は400~600人になったという。僧侶1人と尼僧1人が負傷し病院に運び込まれたというがその原因は不明。
僧侶たちは夜中過ぎまで声を上げ続け、「今後何かことが起れば、それはすべて公安の責任だぞ!」と叫んだ。これに対し、公安側は「すでに僧ケルサン・チュダルは成都(別の情報ではチャムド)に移送され、ここにはいない」と答えたという。
僧ケルサン・チュダルは最近緊張が高まっているナクチュ地区ソク県の出身であり、2004年からこのペユル僧院で学んでいた。公安は彼がディル県の情報を海外に流したとの嫌疑の下に拘束したのではないかと思われている。
ペユル辺りにも最近チベット自治区からのスパイが多く、12日にはペユル僧院に僧衣を来たチベット人ともう1人の年配俗人が来て、僧ケルサン・チュダルのことを聞き出そうとしていたという。彼を拘束したのもチベット自治区の警察と言われている。
僧ケルサン・チュダルの拘束は、先のブログで報告したディルの作家ツルティム・ギェルツェンの拘束と関係があるように思う。ツルティムがディルで拘束されたのは11日であり、ケルサンがペユルで拘束されたのは次の日の12日である。ツルティムは2001年から2009年までペユル僧院に在籍しており、同郷のケルサンは2004年から同じ僧院にいた。ケルサンも著書がある作家である。2人が知り合いでなかったはずはない。ツルティムがケルサンにディルの弾圧の情報を伝えた可能性はある。当局は情報を流したという嫌疑だけでなく、彼らが影響力のある知識人が故に制裁を加えようと思ったのではなかろうか。
参照:10月13日付けTibet Times チベット語版
10月14日付けTibet Expressチベット語版
10月13日付けphayul
10月14日付けRFA中国語版
同チベット語版
同英語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)