チベットNOW＠ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月5日
焼身者に影響を与えたギェベの歌 「来たらん」
アムド、ンガバ出身のチベット人人気歌手ギェペが失踪してすでに１年以上経つ。自ら身を隠しているのか、当局に拘束されているのか、不明のままである。北京在住のチベット人作家ウーセルさんは１０月４日付けブログで彼の「来たらん」という歌をその中国語訳と英語訳とともに紹介されている。彼の歌はこれまで内外で焼身抗議を行った１２６人の思いを代弁していると彼女はいう。
ウーセルブログによれば、２０１２年１１月１５日にアムド、レゴン県ツェンモ郷ゴゲ村で焼身、死亡したティンジン・ドルマ（２３）の父親に会い、話しを聞いたフランスの週刊誌ル・ヌベル・オブゼルヴァトゥール（Le Nouvel Observateur）の記者は、ティンジン・ドルマが焼身の数日前からこのギェべの歌を繰り返し聞いていたと報告したという。
また、２０１２年１１月２５日、アムド、ツェコ県ドカルモ郷で焼身、死亡した尼僧サンゲ・ドルマが残した「お戻りになられた」と題された遺書にはこのギェべの歌の影響が見られるとウーセルさんはいう。
来たらん （ヨンギ・ユ ཡོང་གི་ཡོད། I am coming ）
作詞 ギェべ དགེ་བྷེ།
作曲 ギェべ དགེ་བྷེ།
遠く離れし主よ 我来たらん
目に涙を湛え 我来たらん
雪山チベットの苦楽を語るために 我来たらん
守護者よ あなたを思い出しながら 我来たらん
守護者よ あなたを思い出しながら 我来たらん
心の友よ 我来たらん
善行を行いつつ 我来たらん
心散らさず 一心に 我来たらん
友よ あなたのことを思い出しつつ 我来たらん
友よ あなたのことを思い出しつつ 我来たらん
雪山チベットの兄弟姉妹よ 我来たらん
チベットの苦楽を語りつつ 我来たらん
ビワンを奏でながら 我来たらん
チベットに幸せをもたらすために 我来たらん
チベットに幸せをもたらすために 我来たらん
チベットに幸せをもたらすために 我来たらん
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール（1,500人収容）、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。（写真：野田雅也撮影）
