チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月4日
ディル 生徒4000人が抗議デモ
中国当局による新たな愛国愛党キャンペーンに反発し、ディル県一帯で緊張が高まっている。9月10日に始まったこのキャンペーンのために、ディル県にはチベット自治区政府やナクチュ地区政府から1万8千人の役人が集められたという。愛国愛党と中国国旗掲揚を強要するこのキャンペーンに対し地元のチベット人たちは「まるで文革が再来したかのようだ」と話す。
28日には中国国旗掲揚に反発したモワ郷のチベット人たちが渡された国旗をすべて川に流し、部隊と衝突した。部隊はモワ郷とモンチェン郷を包囲し、住民を弾圧しようとした。これを知って回りのタクル郷、バロ郷、ネシュ郷、タリン郷の住民たちが彼らを弾圧しないようにと要請したが、逆に彼らの内40人が拘束された。
この40人の解放を求めるため28日午後7時頃からディル県庁舎の前に800~1000人ほどのチベット人が集まり、24時間の座り込みハンストを始めた。その夜、チベット自治区共産党書記とナクチュ地区共産党書記が現地に入り、この40人は解放された。しかし、40人全員、全身に激しい暴力を受けた痕が残されていたという。
当局はこれらの抗議活動に参加したチベット人は、その子供たちを学校から追い出し、病院で治療を受けること、冬虫夏草を採取することを禁止すると広言した。
VOTによれば、29日の夕方から、ディルにある小中学校の生徒たち約4000人が学校に集まりこの愛国愛党キャンペーンに対する抗議デモを行った。これらの学校の生徒のほとんどは農牧畜民の子弟であり、今回の騒動により学校を追い出される可能性が高い。デモの後、学生たちがどうなったかの情報は入っていない。家族は子供たちが家に帰らず、非常に心配しているという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)