チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月3日
政府高官の子弟は留学できるのになぜ私たちはダメなのか!?
ゴロ州にある、「雪域草原女学校 (གངས་ལྗོངས་རྩྭ་ཐང་བུ་མོའི་སློབ་གྲྭ)」の女子生徒たちは、留学することを当局が邪魔しているとして、庁舎の前で抗議デモを行った。
今年7月8日、アメリカ、
ワシントン州にある Skagit Valley (སི་ཁ་ཇུས་ཐི།)カレッジから使節団が雪域草原女学校にやって来て、生徒たちに英語の試験をさせ、これにパスした42人をアメリカへ留学させることを決定した。
また、7月9日には、青海民族大学外国語学科の学生13人と雪域草原女学校の生徒21人、会わせて34人が日本の学校に行くことも決定され、その内幾人かはすでに出発した。
しかし、残りの多くの生徒に対し、当局はパスポートを発行せず、このままでは留学が不可能となる事態となった。
10月2日、これらの生徒は西寧の青海省庁舎前に行き、横断幕を掲げ、この政府のやり方に抗議するデモを行った。「政府高官の子弟の多くが外国で学んでいいのなら、なぜチベットのつましい子供たちが外国で学んではいけないのか。私たちは政府のこの不平等な扱いに抗議する」等と横断幕には書かれていた。
「雪域草原女学校」はゲシェ・ジグメ・ギャンツォにより、2005年9月、青海省ゴロ州マチェン県ラギャ郷に創設された。彼は遊牧民の子供たちに修学の機会が与えられていないことを憂慮し、260万元ほどの寄付を集め学校を作った。
彼はこの学校だけでなく、他に学校や福祉施設も建設している。また、輸出入の会社も設立し、アメリカ、ネパール、イタリア、スイス等にアムドの産物を輸出している。政府関係のいくつもの団体の役員も勤めている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)