チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年8月26日
再びチベットの人気歌手逮捕
中国当局は先月15日前後にラサでアムド、ケンロ、マチュ(甘粛省甘南チベット族自治州瑪曲県)の人気歌手ケルサン・ヤーペル(སྐལ་བཟང་ཡར་འཕེལ་)を拘束し、四川省成都の拘置所に拘留した。
元政治犯ラモ・キャプが伝えるところによれば、2012年10月と11月に、彼はチベット内の他の有名歌手多数と共に純粋チベット語を奨励する趣旨の下に「雪山の華」という歌会を主催した。その時、彼が歌った「チベット人たちよ」という歌を当局が政治的に問題があるとみなし、彼は成都の警察から追われる身となっていた。
この歌会のCDは青海省、甘粛省、四川省、雲南省に広く流布されていたが、当局は発売から1ヶ月後にはこのCDを発禁とし、回収し始めた。
彼はこれまでに多くのCDを発表し、チベット全土で若者から年寄りまで広い層から人気を得ていた。彼は38歳、3人の子供がいる。
問題とされた「チベット人たちよ」の歌詞の日本語試訳は以下。
チベット人たちよ チベット語を学ぼう
チベット語を話そう チベット語を話しチベットの文字を学ぶ責任は我々にあるチベット人たちよ 我々は団結しよう 団結しよう
アムド、カム、ウツァン全てが団結しようチベット人たちよ 勇気を持とう
苦楽を越え 歳月を越え 勇気を持とうチベット人たちよ 苦楽を伝え合おう
将来のチベット人の夢を語ろうチベット人たちよ 忠誠の心を持とう
忠誠という共通の柱を支えに 前進しようチベット人たちよ 精進しよう
新世代にチベットの伝統を守るのは我々だ チベット人たちよ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)