チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年8月5日
中国国旗掲揚を拒否した村人3人拘束 / 1959年以前のダライ・ラマ写真はOK!?
中国国旗掲揚を拒否した村人3人拘束
中国政府はチベット各地で中国の国旗を掲揚させることを強要している。特にチベット自治区では役人と警官が僻地の村々をくまなく巡り、国旗掲揚と指導者の肖像写真掲揚を強要するという共産党忠誠心キャンペーンを行っている。
RFAによれば、7月末、チベット自治区チャムド地区パシュ県にあるポルン村とムコ村に役人が現れ、各家に中国国旗を掲揚せよと命令したという。
現地からの報告を受けた在インドの亡命チベット人が伝えるには、「村人たちがこれを拒否した時、役人たちは、命令に従わない者は『反国家活動』を行ったと見なされると警告した。それでも、村人たちは従わなかった。すると役人たちはポルン村から2人、ムコ村から1人を連行して行った」という。
その後、地区には警察と部隊が派遣され、チベット人の移動を制限し、検問を行い、この情報が外部に漏れないようにするために「携帯が押収され、チャムド地区以外と通話した記録を全てチャックしている」という。
このパシュ県では共産党創立記念日である7月1日、歌舞祝賀会の最中、ドンサル僧院僧侶ロプサン・ゲンドゥンが「ダライ・ラマ法王に長寿を!ダライ・ラマ法王のチベット帰還を!チベットに独立を!」と叫び、その場で警官に逮捕されている。彼はその後行方不明のままである。(詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51794932.html)
参照:8月1日付けRFA英語版 http://www.rfa.org/english/news/tibet/flag-08012013160859.html
1959年以前のダライ・ラマ写真はOK!?
近年、中国政府は亡命チベット人たちに対し、チベットに戻ることを勧め、一時帰省のビザも発給するようになった。これを受け、長年別れ離れとなった家族や親戚に会うために帰省しようとする人も少なくない。
最近、そんなチベット人の1人がビザを手にして、20年ぶりに故郷であるチベット自治区のチャムドに帰ろうとした。
彼が話すには「7月20日にネパールとの国境である橋を渡り、中国内に入りシガツェ県のディンリに到着した。ディンリの検問所で警官が自分の荷物をチェックし、ダライ・ラマ法王の写真と法王が著した仏教の本を見つけた」
「すぐにディンリの拘置所に連れて行かれ、そこで10日間拘束され、厳しい尋問を受けた」
「彼らはダライ・ラマの写真がチベットでは禁止されていることを知っていただろうという。私は『最近ダライ・ラマの写真が許可になった』と聞いていたと答えた。すると彼らは『許可されたのは1959年以前の写真だけだ』と言うのだった」
結局彼はその後、ネパール国境の橋まで連れて行かれ、「インドへ帰れ」と命令されたという。
このチベット人は噂を信じてダライ・ラマの写真を故郷への土産として持参したのであろう。それに対し、「許可されたのは1959年以前の写真だけだ」と答えた警官も噂だけで答えたと思われる。
参照:7月30日付けRFA英語版 http://www.rfa.org/english/news/tibet/photos-07302013153444.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)