チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年8月4日
ゾゲの焼身 3人の僧侶に故意殺人罪
7月20日にンガバ州ゾゲ県タンコル郷タンコル・ソクツァン僧院僧侶クンチョク・ソナム(18)が焼身・死亡した後、当局はこの焼身に関わったとして現在までに21人を拘束した。その後解放された者もいるが、今も9人の行方が不明のままという。
そして、近日その内の3人の家族の下に警官が手紙を届けに来た。手紙は四川省ンガバ州の司法当局からのものであり、彼らが「中華人民共和国刑法第17条に則り、故意殺人罪に問われる」と書かれていたという。
3人とは何れもタンコル・ソクツァン僧院僧侶である僧パルデン・イクネン、僧ロプサン・テンジン、僧サンゲ・パルデン。3人とも焼身した僧クンチョク・ソナムの親友という。
家族は手紙を届けた警官に、彼らの居所を尋ねたが、警官は「知らない」と答えたそうだ。
地元のチベット人たちは3人に長期刑が言い渡されるであろうと推測し、家族は非常に心配しているという。
彼らが拘束されて、まだ日が浅いので、裁判が行われてその結果「故意殺人罪」が決定されたとは思わない。当局は裁判を開く前にすでに罪状を勝手に決めていることをわざわざ家族に知らせて来たということであろう。「中華人民共和国刑法第17条に則り」とたいそうなことを書いているが、結局自分たちが法律を無視して、何でも決められると宣言しているようなものである。
焼身し、その場で黒こげになる僧クンチョク・ソナム。
焼身した僧クンチョク・ソナムは明らかに現場で死亡している。何をもって故意殺人罪なのか、まったくの冤罪であることは明白である。1人が焼身抗議を行えば、これほど多くの関係者が冤罪で罰せられるぞと脅しているのである。
依然として中国は焼身抗議の根本原因を考慮しようとはせず、焼身を犯罪化し、関係者を不当に罰するという卑劣なやり方を続けることで、チベット人の反感を煽ってばかりである。
参照:8月3日付けTibet Express チベット語版 http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10927-2013-08-03-03-46-17
8月3日付けVOT中国語版 http://www.vot.org/cn/西藏索格藏寺3名僧人被指控杀人罪/
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)