チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年8月1日
中国のアップル製品サプライヤーがチベット人等の少数民族不採用を明示
「回族、チベット族、ウイグル族その他特殊生活風俗を持つ少数民族は雇わない」と明記された雇用条件書。
アメリカベースの労働条件監視組織である中国労工観察(China Labor Watch)は7月29日付けで「アップルは約束を守っていない。安いiPhoneは中国人労働者の大きな犠牲の上に成り立っている」と題されたのレポートを発表した。その中で中国にあるアップルのサプライヤーの工場で働く労働者たちが如何に劣悪な労働条件の下で働かされているかを暴露し、また、これらの工場が募集要項の中でチベット族やウイグル族など少数民族を雇わないと明言していることも問題視している。(中国労工観察レポート http://www.chinalaborwatch.org/pdf/apple_s_unkept_promises.pdf)
これを知ったTYC(チベット青年会議)はさっそくアップル本社の責任者宛に手紙を書き、「直ちに調査し、このような民族差別を止めさせるべきだ」と主張している。これが正されない時にはアップル本社前で抗議デモを行う用意があるという。
中国労工観察によれば、中国におけるアップルの主要サプライヤーであり、iPhone 4、 iPhone 4s 、 iPhone 5の組み立てを請け負っているPegatronグループの3つの工場において、公然と民族差別が行われている上に36項目の法律違反、50項目の道徳的違反を含む、86項目の労働権利違反が存在するという。
中国労工観察は今年3月と7月に7万人ほどを雇うこのグループの上海工場等で調査のために秘密裏に約200人にインタビューを行ったという。
大多数の労働者は中国の労働基準法で49時間までと決められているにも関わらず、週に66~69時間の労働を行い、妊婦も時に1日に11時間の労働を科される。労働時間をごまかすためにタイムカードの操作が行われている。18歳以下の労働者も多いという。
これに対し、アップルは「安全で公平な労働条件を提供することを約束しており、直ちにこの件を調査する」との声明を発表している。
今回はこのような形で少数民族に対する雇用差別が明らかにされたが、明示されていなくても、例えば賃金の面でもチベット人やウイグル人に対する差別は中国内至る所に存在する。
参照:7月30日付けphayul http://phayul.com/news/article.aspx?id=33806&article=Tibetans+unwanted+at+Chinese+factories+making+Apple+products%3a+Report
8月1日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33812&article=TYC+demands+Apple+investigate+charges+of+discriminative+hiring+policies+against+Tibetans+in+Chinese+factories
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)