チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年7月25日
僧侶焼身後 僧俗連行が続く / ダブルスタンダード
7月20日にゾゲ県タンコル郷ソクツァン僧院僧侶クンチョク・ソナムが焼身抗議を行い、死亡した後、現地では僧侶や俗人が次々連行され、これまでに14人が行方不明になっているという。
21日の午後10時頃、ソクツァン僧院僧侶パルデン・ギャンツォ(20)が突然連行され、午後11時頃には僧テンジン・ギャンツォが、23日の午前5時頃には俗人であるサンゲ・パルデン(25)が自宅から連行された。
7月7日に連行されたソクツァン僧院の僧ゲレック・チュンペル、僧ロプサン・チュンジョル、タンコル郷第2地区の俗人ケルサン・イクネンの3人も未だ行方不明のままであり、家族は非常に心配しているという。
焼身、死亡した僧クンチョク・ソナムの先生と母親、兄弟も21日の午後連行され、尋問を受けた。しかし、彼らは23日には解放されたという。
その他、タンコル郷の僧侶、俗人合わせ、これまでに14人が連行され、その後行方不明になっている。
焼身事件の後、当局は地区一帯の情報網を遮断し、現在も大勢の部隊が至る所に配備され厳重な警戒が続いているという。
参照:7月25日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7945
ダブルスタンダード
アメリカベースのチベット人権団体ICT(International Campaign for Tibet)は7月24日付けリリースで、この僧クンチョク・ソナムの焼身と、同じ日に北京空港内で爆発事件を起こした車椅子に乗った山東省出身の翼中星(34)のケースを比べている。
同じく社会的不正義を訴えるために自殺を計り、自分以外誰も傷つけなかった2人に対する政府やメディアの扱いがあまりにも違いすぎることを指摘している。
翼中星については同情的な扱いをするメディアも多いが、僧クンチョクのケースは完全に無視されている。これは中国政府や中国メディアのチベット人に対する差別的ダブルスタンダードの現れだという。
1人は左手を失い、1人は焼死している。翼中星の親族や友人が連行されたという話しも聞かない。もしも、彼が死亡していたとして、遺体が家族に引き渡されず、その葬儀を当局が禁止したとは思われない。
参照:http://weblog.savetibet.org/2013/07/24/a-bombing-a-self-immolation-and-a-double-standard/
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)