チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年7月23日
続報:ゾゲ 僧クンチョク・ソナムの焼身
7月20日の朝、ンガバ州ゾゲ県タンコル郷タンコル・ソクツァン僧院の18歳の僧侶クンチョク・ソナムが焼身抗議を行い、その場で死亡した。焼身の状況や直接の原因、遺体がその後どうなったか等について不明のままであったが、数日経ち、ようやく様々なことが写真と共に伝えられた。
僧クンチョク・ソナムが燃え尽きるまで、僧侶たちは傍で経を上げながら見守る。
彼が焼身した場所は、僧院の本堂から少し離れた路上脇であった。何人かの僧侶が彼の焼身を目撃したといわれ、彼らは僧クンチョクが大きな炎に包まれながらも両手を合わせ何か叫んでいたが、その内容は聞き取れなかったという。倒れ、燃え尽きる間にも、僧クンチョクは両手を合われたままの姿勢を崩さなかったともいわれ、黒こげになった遺体もその両手を合掌した姿であった。
当初、部隊に遺体を奪われないように遺体が川に運ばれたのか、僧院内にあるのかが判明していなかったが、結局遺体は僧院内で数時間追悼会が行われた後、大勢の部隊が遺体を奪いに来たというので、急いで僧院裏手からマチュ川のほとりに運ばれ、そこで水葬されたという。
彼は焼身前に友人に対し、悲しい顔で「中国の圧政の下に暮らさねばならないことは苦しみの元凶だ」と語っていたという。
7月7日にはこのタンコル・ソクツァン僧院の僧侶ゲレック・チュンペルと僧ロプサン・チュンジョル、それに俗人であるケルサン・イクネンの3人が理由不明のまま当局に連行され、その後行方不明になっている。このことが、今回僧クンチョク・ソナムが焼身抗議を行う原因の1つになっていたのではないかと、現地の人々は話している。
また、彼が焼身した7月20日の午後11時頃、タンコル・ソクツァン僧院の僧ティンジンが連行された。
現在タンコル郷には千人以上の部隊が動員され、厳重な警戒が敷かれ、緊張が高まったままという。
このゾゲ県は去年末から焼身の中心地となっている。去年11月と12月に合わせて3人、今年に入り7人が焼身、合わせて10人が焼身している。ゾゲ県で焼身が増加したことの責任を取らせられ、チベット人に人気が高かったと言われる県のチベット人党書記テンジン・ヤペルが7月8日、県の環境課の責任者に降格させられている。
参照:7月22日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7932
7月22日付けVOT中国語版 http://www.vot.org/cn/自焚僧人留下遗言对中共压制表达不满/
7月17日付けRFA英語版 http://www.rfa.org/english/news/tibet/transfer-07172013200640.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)