チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年7月16日
ダライ・ラマの写真はやはり不許可
最近、世界的メディアも含め多くのメディアが「チベットでダライ・ラマの写真が許可か?チベット政策軟化か?」という記事を出していた。
事の始まりは先月初めにアムド、ツォロ(青海省海南チベット族自治州)で何度か役人と僧侶の会議が開かれ、「ダライ・ラマの写真掲示許可」等を決定した、というニュースが伝わったことからだ。その後、カムのカンゼやラサのガンデン僧院でも許可が出たという話しが続いた。もっとも、話しだけで、正式な公式書面を確認したという情報は全くなかった。
これに対し、北京政府が「ダライに対する政策に変更はない」と表明し、7月8日には甘粛省のラプラン・タシキル僧院を訪問した、共産党指導部ナンバー4の兪正声が「分裂主義者ダライ一味との闘いを強化せよ」と訓示した。(詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51795846.html) これらの反応により、「ダライ・ラマの写真許可」の話しは嘘だったようだ、と大体の者は思った。ただし、これまでは中央政府も兪正声も直接「ダライの写真は不許可」ということは言ってなかった。
Tibet Timesによれば、昨日7月15日に、噂の最初の出所であった青海省海南チベット族自治州で州知事も出席する会議が開かれ、その席上きっぱりと「ダライの写真不許可」が決定されたという。「甘粛省における先の兪正声の言葉を受け」と書かれているから、この地区の役人や僧侶には少しは迷いがあったらしいが、兪正声のツルの一声で最終決定されたと思われる。ついでに、「そのような噂を広めてはならない」とされた。一件落着である。
北京のウーセルさんとかは最初からこの話を疑って掛かり、「チベットにはこんなことわざがある。『チベット人は楽観的すぎてダメになり、漢人は疑い深すぎてダメになる』 」と述べていた。今回も期待先行で不確かな話だけだ広まっただけと言えるかもしれない。ま、それだけ、少しでもいいからチベット政策を緩和してほしいという思いが大方のチベット人の心の中にあるということであろう。こんなに沢山の焼身者が出たのに、何も変わらないのじゃ浮かばれないと言うわけである。
そんな微かな期待も冷血共産党により、再び徹底的に粉砕されたということである。
参照:7月16日Tibet Times チベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7907
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)