チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年7月7日

チベット内各地の法王誕生日祝賀会 タウでは当局が発砲、1人重体か?

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昨日はダライ・ラマ法王の78歳のお誕生日であったが、禁止令にも関わらずカムとアムドの幾つかの地区でこれを祝う集会が行われた。これに対し、当局が無視した地区もあれば、取り締まった地区もある。未確認情報であるが、カム、タウでは部隊の発砲により負傷者が病院に運び込まれたと言われている。

写真が伝わった地区もあるので、現在までに伝わった情報を集めてみる。

ペユル

RFAによれば、カム、ペユル(四川省カンゼチベット族自治州白玉県)の2つの郷(登龙乡、和河坡乡)では6月22日、ダライ・ラマ法王の写真を掲げ、長寿を祈る法要を行った後、歌舞と競馬による祝賀会を開いた。しかし、次の日には部隊が車両15台を列ね、会場に押し掛け、法王の写真を没収し、責任者は誰なのかと尋問した。この時、2人のチベット人が前に出て「自分たちが責任者だ」と名乗りを上げた。

2人は連行されたが、取り調べの後6月29日には解放された。地区の人々はこの2人を盛大に迎え入れ、勇敢な行為に感謝を示し、連帯を誓い合ったという。

参照:7月5日付けRFA中国語版 http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shaoshuminzu/dz-07052013104726.html

カンゼ、ダンゴ

同じくRFAによれば、昨日7月6日、カム、カンゼとダンゴでダライ・ラマ法王の誕生日を祝す大規模な集会が開かれた。

e953299b-03a3-4d0c-9d22-f854e706ed1eカンゼではカンゼ僧院に地元の僧侶、尼僧、俗人約1500人が集まり僧院内に法王の写真を掲げ、長寿を祈る法要を行った後、盛大に焼香を行ったという。

Karze2カンゼ僧院内に掲げられた法王写真。

drango5ダンゴでもダンゴ僧院他聖山や各家庭でも僧侶や俗人が集まり法王の長寿を祈るためにルンタが撒かれ、焼香が行われた。しかし、ダンゴでは午後から電話が遮断され、詳しい情報は入らなくなったという。

参照:7月6日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/dalai-lamas-schedules/78th-birthday-of-hh-dalai-lama-celebrated-in-karze-and-drango-07062013103702.html

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アムド、ゴロ(青海省果洛チベット族自治州)のクル地区では表向きはグル・リンポチェの像の開眼式という名目でダライ・ラマ法王の誕生日を祝うパーティーが行われ、約500人の僧俗が集まり、歌舞による祝賀会が行われたという。

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アムド、レゴン(青海省黄南チベット族自治州同仁)では前日の7月5日から地元の聖山の麓に大勢の人々が集まり、法王の長寿を祈る法要をおこない、ルンタが撒かれ、焼香が行われた。

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アムド、アムチョク(甘粛省夏河県アムチョク郷)でも、聖山の麓に大勢が集まり、法王の長寿を祈るために、ルンタが撒かれ、焼香が行われたという。

クンブン

ロイター通信は、クンブン僧院がある海東地区に入ったらしく、7月6日付けで現地の様子を伝えている。

「青海省ではダライ・ラマの写真掲揚の許可を含む、チベット政策緩和という話しも伝えられているが、7月6日にそのような状況は確認されず、おおっぴらにダライ・ラマの誕生日を祝う祝賀会が開かれるということもない。多くのチベット人はこの日がダライ・ラマの誕生日だということを知ってもいないようであった」と報告する。

しかし、最近中国が選んだパンチェン・ラマが訪問したばかりのクンブン僧院には法王の写真が掲げられていたといい、僧院の僧侶にインタビューしている。

「我々はそれぞれの宿坊で法王のお誕生日を祝う。おおっぴらに祝うことは決して行わない」と40歳の僧ケドゥップは話し、「しかし、我々は何れ、誕生日という特別な日がなくても、毎日法王に祈っている」と続けた。彼は携帯のテキストメッセージで「青海省当局が法王の写真許可について話し合った」ということを知らされたが、これをどう解釈していいのか迷っているという。

ロイターは四川省にあるGuangfa僧院(?)にも電話し、そこの僧院長からこの法王写真許可についての意見を聞いている。彼は「心の中で法王に祈りを捧げているので、それで十分だ」と答え、写真が許可されるされないは重要な問題ではないと言ったそうだ。

参照:7月6日付けロイター http://www.reuters.com/article/2013/07/06/us-china-tibet-dalailama-idUSBRE96502H20130706?irpc=932

昨日も伝えたが、RFAによれば、最近、法王写真掲示許可が会議で決定されたと言われるアムド、ツォロ(青海省海南チベット族自治州)では、逆にダライ・ラマ誕生日に向かい、当局は僧院や各家庭を厳しく捜査し、法王の写真が見つかれば厳しく罰すると言明している。

参照:7月5日付けRFA中国語版http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shaoshuminzu/dz-07052013104726.html

タウで当局がダライ・ラマ法王の誕生日を祝おうとした人々に、暴行、発砲、1人重体

最後に事実であれば、一番重大なニュースと思われる一件。今のところ、wechat上に情報が流れているだけで、未確認情報としか言えないが、最初の状況提供者や内容から言って、事実である可能性が高いと思われる。

タウ出身者である在ダラムサラの元政治犯ロプサン・ジンパが現地から得た情報によれば、ダライ・ラマ法王の誕生日を祝うために、タウ・ニャンツォ僧院の僧侶、ゲデン・チュリン尼僧院の尼僧を中心に僧俗数百人が地元の聖なる丘であるシダク・マチェン・ボムラに向かったが、丘の周辺には大勢の部隊が展開し、チベット人たちが近づくのを阻止したという。

そして、2011年に焼身抗議を行い死亡した尼僧パルデン・チュツォの弟である僧ジャンチュプ・ドルジェが車で丘の頂上に近づいた時、軍隊がその車に向かって石を投げ、車の窓を壊し、さらに、一緒にいた、ニャンツォ僧院の戒律師ツェリン・ドゥンドップ等5人に向かって発砲した。全員被弾し病院に運び込まれたが、特にその中、ウゲン・タシ(タシ・ギェルツェンとの情報もあり)は重体となり、県の病院では処置しきれず、成都の病院に運ばれたという。

その他、部隊は集まっていたチベット人に向かい催涙弾を発射し、また多くのチベット人が殴られ負傷したという。

現在、ニャンツォ僧院周辺には大勢の部隊が出動し、厳重な警戒態勢を敷き、チベット人の移動を禁止しているという。

追記:撃たれた人の写真等も伝わったが、状況については未だ錯綜している。明日、再び報告する。

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おまけの1枚。東京とは随分雰囲気の違うスイスでの法王誕生日祝賀会。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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