チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月17日
11日にタウで焼身した尼僧の死亡が確認された 内地死亡確認102人目
6月11日にタウ(四川省カンゼチベット族自治州道孚)で焼身した尼僧ワンチェン・ドルマ(31)の消息は、現地の電話やネットが遮断されていたため不明のままであった。15日の午後から電話とネットが再び通じるようになり、彼女の消息が判明し、写真も伝えられた。
Tibet Expressによれば、焼身後、警察によりダルツェンドの病院に運ばれていたワンチェン・ドルマは14日の午後8時頃、病院で死亡したという。遺体は家族に渡されず、すぐに当局により電気遺体焼却炉で焼却された。
14日、ミニャク・ダパにある家族の元に警官が押し掛け、遺族の下に慰問に来た地区の人々、親戚、僧侶や尼僧を追い払い、家族が外に出ることも禁止した。このような状況の下、家族は追悼法要も行えない状態という。
ワンチェン・ドルマはタウ県ダクト郷ダパ村ギェルブム家の娘。俗名はツェリン・ドルカル、法名はワンチェン・ドルマ、31歳。父の名はテンジン、母の名はユドゥン。
近くに尼僧院がなかったので、タウ、バルシャプ・ダクカルという聖山にあるニンマ派のラマ、トゥルク・チュキニマが始めた僧・尼合同の修行場で修行していた。彼女は焼身の前日、10日にタウの学校を訪問し、生徒たちに「チベット語をしっかり学ぶように」というスピーチをしていたという。
同郷の人の話によれば、ダパ村では、数年前から政府がここにダムと発電所を作るので、村人たちは移住しろという命令を受けているという。これにより、村人たちは非常に困難な状況に陥っているという。
彼女の郷里である、ダクト郷ダパ村はタウの南方63キロのところにある。山に囲まれた寒村である。
地図はタウ県全図。上方の赤い印がタウ、下方の印がワンチェン・ドルカの郷里。
2009年以来、内地焼身119人目、内外合わせ123人目。女性19人目。
内外合わせ、死亡確認104人目。内地死亡確認102人、外地2人。
参照:6月17日付けTibet Express チベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10720-2013-06-16-15-14-10
内地焼身者119人の顔写真:VOT Gurbum Tibet Gyalo制作
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)