チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月15日
11日にタウで焼身した尼僧の身元判明
6月11日、現地時間午後5時頃、カム、タウ(ཁམས་རྟའུ་རྫོང་། 四川省カンゼチベット族自治州道孚県道孚)のニンツォ僧院近くで焼身した尼僧の身元がようやく判明したが、生死は依然不明のままである。
Tibet Express によれば、彼女の名前はワンチェン・ドルマ(དབང་ཆེན་སྒྲོལ་མ།)、31歳。出身地はタウ県内であるが、南のニャクチュ県とのほぼ県境にあるダパ(འདྲ་པ།)と呼ばれる場所という。所属していた尼僧院はバルシャプ・ダクカルという聖山の中にトゥルク・チュキ・ニマという高僧が創建したダクカル尼僧院(བྲག་དཀར་བཙུན་དགོན།)であるという。同じくこのタウで2011年11月3日に焼身、死亡した尼僧パルデン・チュツォ(35)が所属していた尼僧院であるダクカル・ジャンジュプ・チュリンとは違うが、同じくダクカルにあり、場所は近いという。
彼女の焼身を目撃した人の話によれば、その人の後ろの方から大きな叫び声が聞こえたので、振り向くと炎に包まれる人が立っていたという。その時、同じくこれを目撃した男性が「早く火を消して確保しないと、中国の手に落ちるぞ!」と叫び、火を消そうとした。数人で火を消そうとしたが、そうする内にも部隊が駆けつけ、消火器で火を消し、彼女を車にのせ連れ去った。同時に先ほど「早く火を消して確保しないと、中国の手に落ちるぞ」と叫んだ男性も2人の警官にひどく殴られた後、連行されたという。
ワンチェン・ドルマは最初タウの病院に運ばれた後、大きな軍のトラック3台とともにダルツェンドの病院に移送された。その後、噂では両親か親戚の1人が病院で彼女に面会したらしいと言われているが、確認された消息は伝わっていない。その他、両親の名前、尼僧院の状態、同時に拘束された男性の身元なども、電話やネットが繋がりにくい状態が続いており不明のままという。
参照:6月14日付けTibet Express チベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10716-2013-06-14-16-43-22
6月15日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33601&article=Latest+Tibetan+self-immolator+identified+as+nun+Wangchen+Dolma
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)