チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月14日
ンガバの人気歌手2人に2年の刑 その他作詞家等も行方不明
2008年以来、中国当局はチベットの真実を伝えるチベット人作家、芸術家、知識人やチベット人のアイデンティティーを守ることを訴える歌手等を大勢逮捕し、拷問を加え、懲役刑を与えている。
ダラムサラ・キルティ僧院は昨日、新たにンガバの人気歌手2人に刑が言い渡されたことを伝えた。四川省ンガバ州ンガバ県メウルマ郷出身の歌手ペマ・ティンレー(པདྨ་འཕྲིན་ལས་22)とチャクドル(ཕྱག་རྡོར་32)は共同で去年7月中に「སོས་མེད་རྨ་ཁའི་ཟུག་གཟེར་(癒されぬ傷口の痛み)」と題されたDVDアルバムを発表した。そして、その数日後、甘粛省甘南州のマチュで2人とも拘束され、その後6ヶ月以上行方不明となっていた。
このアルバムの中には焼身抗議を含むチベットの現状が歌われており、またダライ・ラマ法王、先代のパンチェン・ラマ、キルティ・リンポチェ、センゲ首相を讃える歌も含まれていた。
チャクドルは去年8月10日にンガバ、メウルマ郷で焼身、死亡したチュパ(གཅོད་པ།24)の親戚であった。チュパの焼身については>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51757240.html
今年2月中にンガバの裁判所により、彼ら2人にそれぞれ2年の刑が言い渡されたということが判明した。裁判は弁護士も付けられず、家族も呼ばれない、秘密裁判であった。その後、家族に対し警察は2人が四川省綿陽市の刑務所に収監されていると伝えた。
2人の拘束後まったく会うことができていない家族はすぐに綿陽刑務所に向かった。しかし、刑務所側は2人がそこにはいないと答え、会うことができなかった。結局2人がどこにいるのかは依然不明のままであり、家族は2人の安否を非常に心配しているという。
その他、このアルバム制作に関わった音楽家のケンラップ(མཁྱེན་རབ་)と作詞家のニャク・ドンポ(ཉག་ལྡོམ་པོ་)も行方不明となっており、家族が捜索するもまったく安否知れず、行方不明のままという。
以下、High Peaks Pure Earthが英語のサブタイトルを付けてyoutube上に発表した、チャクドルの歌「これが現実だ」である。歌詞の日本語訳を付ける。
作詞:ニャク・ドンポ
歌手:チャクドル
我らの貴重な鉱物は
当局によりだまし取られ
この聖なる大地を穴だらけにされた
これが我らの意志に反する力
我らの過去の学者たちの成果
5つの主と従の至高の科学
全ての手段を使いこれらは破壊された
これが我らの意志に反する力
雪の国の相続人
勇敢な若い男や女
当局により殺害された
これが我らの意志に反する力
全ての生き物の守護者
法王テンジン・ギャンツォ
当局により我らは引き離された
これが我らの運命
これが我らの運命
参照:6月13日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/two-tibetan-singer-missing-06132013095001.html
同英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/praised-06132013144450.html
同中国語版http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shaoshuminzu/dz-06132013151435.html
6月13日付けTCHRDリリースhttp://www.tchrd.org/2013/06/two-tibetan-singers-secretly-sentenced-but-whereabouts-unknown/#more-2217
6月13日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7786
6月13日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33590&article=China+sentences+two+Tibetan+singers
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)