チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月7日
冬虫夏草の採取場を巡り殺し合い、法王が訓戒
最近アムド、レゴンとカム、チャムドで相次いで冬虫夏草の採取場を巡るチベット人の村や家同士の争いが起こり、5月30日にレゴンで2人が銃殺、同じく30日にチャムドで3人が銃殺されるという事件が発生した。この事態を受けダライ・ラマ法王は6月4日付けでこのような争いを直ちに止めるようにという訓戒を発表された。
アムド、黄南チベット族自治州レゴン県では5月17日にネント郷のシャデン村とロンチェン村が冬虫夏草の採取場を巡り衝突。双方に負傷者が出た。30日には再び衝突し、その際シャデン村側が発砲し、ロンチェン村の20歳前後の若者と40歳前後の人が撃たれ死亡した。その他3名が被弾し病院に運び込まれたという。
また、チベット自治区チャムド地区ラト郷ギャル村のホルツァ家とコルドゥ地区の住民の間で同じく冬虫夏草の採取場を巡り争いが起こり、まずロルドゥのゲンドゥンと呼ばれる若者とホルツァン家のチュギェが刀の切り合いを行い双方が死亡した。その後ホルツァン家の男5人がコルドゥに押し掛けネンダクという男を撃って殺したという。
この地区では予てより土地を巡る争いが絶えず、地域のラマたちが何度も仲裁に入っているという。また警察も最近やっと動き、銃を保持していたとしてコルドゥの住民9人を3ヶ月前に逮捕していた。2000年以降ラト郷では土地を巡る争いによりこれまでにすでに40人が死亡しているという。
レゴンの事件に関し現地の人がRFAに対し、「5月17日に衝突があったとき、すでに誰かが銃を発砲したという噂が立っていたが、地元の警察はまったく動こうとしなかった。彼らは政治的なことならすぐ動くが、チベット人同士のけんかはほっておくことが多い。30日の事件が起った後、直ぐにレゴン・ロンウォ僧院の僧侶たちが現場に来て双方を仲裁した。31日になり軍と警察が大勢押し掛け、これまでに双方から30人ほどを連行した。その他多くの者が山に逃げている」と報告する。
このような、チベット人同士の土地を巡る争いを憂慮し、ダライ・ラマ法王は6月4日付けでこのような争いを直ちに止めることを訴える声明を発表された。その中で法王は「チベット内地で村同士、家同士による土地や水を巡る争いが発生し、特に最近冬虫夏草の採取場を巡り重大な状況が発生したことを非常に残念に思う。人を害する行為は仏教の教えに反することは言うまでもない。その上、品行方正というチベット人の評判を汚す恥知らずな行為である」と述べられ、「直ちにそのような行為を止めるように」と訓戒された。
参照:6月4日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7753
同6月1日付けhttp://www.tibettimes.net/news.php?cat=3&&id=7737
同5月31日付けhttp://www.tibettimes.net/news.php?cat=3&&id=7738
6月5日付けRFAチベット語版 http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/lack-of-timely-action-06052013162436.html
6月6日VOT放送分
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)