チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月4日
焼身者を弔う法要を行ったとして2人の僧侶に3年の刑 / 仏教の旗を掲げただけで僧侶や密教行者多数に重い懲役刑 / 天安門事件ビデオ
焼身者を弔う法要を行ったとして2人の僧侶に3年の刑
昨年11月19日、アムド、ツォシャル(མཚོ་ཤར་海東地区)ヤズィ県(ཡ་རྫི་རྫོང་循化撒拉族自治县)カンツァ・チベット族郷(་རྐང་ཚ་ཞང་岗察藏族乡)カンツァ(ビンドゥ)僧院の傍でワンチェン・ノルブ(དབང་ཆེན་ནོར་བུ་)25歳が中国政府に対する抗議の焼身を行い、死亡した。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770050.html
ワンチェン・ノルブは焼身しながら、「ギャワ・テンジン・ギャンツォ(ダライ・ラマ法王)をチベットへ!パンチェン・リンポチェを開放せよ!チベット人には自由が必要だ!」と叫んだ。カンツァ郷は先代の10世パンチェン・ラマの故郷である。
遺体はカンツァ僧院に運び込まれた後、僧院傍の葬儀場で荼毘に付された。葬儀には地区の僧侶、チベット人のほぼ全員が集まり、大声でダライ・ラマ法王を讃える詩句が唱えらたと伝えられた。
今回、明らかになったのは、彼の葬儀に参加し、その後ビンドゥ僧院で大勢の僧侶や一般人を集め彼のために特別の法要を組織し、その導師を務めたとされるビンドゥ僧院僧侶ツゥンドゥ(27)と、法要のために車両を用意したり、香典を集めたとされる僧侶ゲンドゥン・ツルティム(30)に、ヤズィ県の裁判所によりそれぞれ3年の刑が言い渡されたということである。
裁判は秘密にされ、家族にもまったく知らされず、弁護士も付けられなかったという。なお裁判が行われた日付についてTibet Timesはチベット暦の3月8日(西暦4月18日)と伝えるが、phayulは西暦3月8日と書く。
彼ら2人は焼身の2日後の11月21日にワンチェン・ノルブの家族を弔問したが、その時同じく弔問に訪れた他の多くのチベット人とともに拘束された。その後、この2人以外は解放されたという。
参照:6月4日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7749
6月4日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33539&article=China+sentences+two+monks+for+offering+prayers+for+Tibetan+self-immolator
仏教の旗を掲げただけで僧侶や密教行者多数に懲役刑
RFAによれば、今年2月中にアムド、ツォヌップ、テムチェン県(མཚོ་ནུབ་ཁུལ་ཐེམ་ཆེན་རྫོང་青海省海北チベット族自治州天峻県)ツォンチュ地区にあるサンガク・テンギェ・ノルブリン(གསང་སྔགས་བསྟན་རྒྱས་ནོར་བུ་གླིང僧院)の密教行者数人が当局により連行され、さらに3月中にスル地区の僧侶シェラップが連行されていたが、最近になり、テムチェン県の裁判所により彼らに重い懲役刑が科されたという。
ツォンチュ地区の僧侶ジャンパに6年の刑、スル地区の僧侶シェラップに5年の刑、高僧プンツォクに4年の刑、その他の僧侶や行者は彼らより短い刑期を受けた(人数、名前、刑期は明記されていない)。
罪状については国家の分裂を煽動し社会の安定を乱したとされているというが、今年2月中に僧院内に仏教の旗を掲げたことが原因ではないかと思われている。
チベットでは仏教の旗を掲げるだけでも国家分裂罪に問われるということである。
参照:6月3日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/many-tibetan-sentenced-in-themchen-amdo-06032013142454.html
今日は、1989年6月4日天安門事件の24周年記念日である。
その日のビデオを1つ紹介する。<閲覧注意!>
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)