チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月28日
ディルで聖山をえぐる鉱山開発に抗議するために数千人が集結 軍とにらみ合う
聖山の麓に集まったチベット人たち。
カム、ディル(ཁམས་འབྲི་རུ་རྫོང་チベット自治区ナクチュ地区ディル県)にある有名な聖山ナクラ・ザンバラ(ནགས་ལྷ་ཛམ་བྷ་ལ་)で鉱山開発が始まることを知った地元チベット人がこれを阻止しようと集結する。
Tibet Expressによれば、5月24日に車約1000台に分乗し約4500人が聖山の麓にあるダタン郷に集まったという。これに対し、当局は25日に軍車両大小合わせ約50台を送り込み、解散しないときには武力使用も辞さない姿勢を示し、緊張が高まっている。
この鉱山開発に対し、地元のチベット人たちが強く反対していることを知った当局は、道路を作ったり電柱を立て、変電所を作ることで地元に利益をもたらすことができると宣伝している。しかし、地元の人たちはこのような計画自体にも反対している。
ディル地区では1990年代から鉱山開発が始まり、2012年にはこの聖山における鉱山開発が何度か始まろうとしたがその度に地元チベット人が抗議を行い、これまでは阻止することができていたという。
情報を伝えた現地チベット人は「今は冬虫夏草採集の季節であるが、ディルの人たちは環境保護のためにみんな時間を割いて自主的に集まっているのだ」という。
このナクラ・ザンバラ聖山はディルの守り神の住まいとして有名であり、人々の篤い信仰の対象となっている。
参照:5月27日付けTibet Expressチベット語版 http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10624-2013-05-27-06-32-37
5月28日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7720
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)