チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年5月24日

ダラムサラで中国が送ったスパイ逮捕

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2405a2スパイを命令した李玉泉とスパイのペンパ・ツェリン。

5月22日にダラムサラ、マクロードガンジで中国が送った1人のスパイがインド警察により拘束された。名前はペンパ・ツェリン(33)というナクチュ出身のチベット人である。彼はチベット自治区ナクチュ県の公安部長官であり、自治区第9次国家人民会議のメンバーでもある李玉泉の指示を受けていたという。

彼は普段デリーに住んでいたが、数日前からダラムサラに来ており、水曜日の夜逮捕された。

ペンパ・ツェリンは1999年から2002年まで人民解放軍に所属し、諜報活動や戦闘訓練を受けていたという。

チベット亡命政府保安省秘書であるワンチュクはVOAのインタビューに答え、「2009年に彼が亡命して来たときから、彼がチベットで軍人や警官をやっていたことは分かっていたので、特別扱いにしていた。しかし、彼が中国のスパイだとは分かっていなかった。最近になりタシ・ギェルツェンとカルマ・イシェを殺そうとしているということが判明したので、拘束した。拘束した後、彼が『中国のスパイである』ということを白状したということだ」と話す。

VOA:主にどのような仕事していたのか?
ワンチュク:中国は亡命チベット人たちが過激なテロリスト活動を行っているという疑いを持っているので、亡命政府、TYC初め各NGOがどのような過激な活動を行っているのかを調査することが主な目的だったと彼は言う。しかし、いくら調べてもそのような事実は見つからなかったので、単にダライ・ラマや亡命政府の言動などを報告していたという。

ペンパ・ツェリンは2002年、ナクチュ地区ラリ県トメ郷の出身。李玉泉の命を受け2年間特別訓練を受けた後、ネパール国境のダムまで送られ、ネパール経由でインドに入った。インドに滞在中「自分は亡命政府保安省の人間だ」と偽り、多くの人を騙していたという。

Untitled-11殺されそうになったというタシ・ギェルツェン(左)とカルマ・イシェ(右)。

VOA:どうして中国は2人を殺そうとしたのか?
ワンチュク:彼が言うには中国の高官李玉泉が「タシ・ギェルツェンとカルマ・イシェは以前中国の刑務所にテロリストとして収監されていた者である。彼らは危険だから殺せ」と命令した。最初から殺せではなく、最初は2人を「ネパールまで連れて来い、ネパールで自分たちが片付ける」ということだったそうだ。そのような命令を受けたので、ペンパ・ツェリンはこの2人と仲良くなり彼らをネパールに連れて行くことを試みたが、結局2人はネパールに行く事はなかった。そこで、その高官はネパールに赴き、そこでペンパ・ツェリンに会って、「毒で2人を殺せ」と言って毒を渡したという。今回タシ・ギェルツェンとカルマ・イシェから殺されそうだということ聞き、彼を拘束することをインドの警察に依頼したのだ。

一般に、中国が亡命側にスパイを送り込み、亡命社会を乱し、破壊しようとしているということは予てよりはっきり分かっていることだが、証拠を掴めない限りは逮捕はできない。今回証拠を掴んだので、ほっておけば危険なことになるというのでインド警察に依頼したのだ。

ペンパ・ツェリンはダライ・ラマ法王の健康状態やスケジュールをはじめ、NGOの活動、主要活動家のプロフィール、新規亡命者の情報等を定期的に電話やネットを通じて報告していたという。李玉泉は2012年以降2度に渡り他のエージェントと共にペンパ・ツェリンとネパールで会い、2人の殺害を指示した時には3種類の毒を渡したが、その時彼の目の前で試験的に2匹の子犬と鶏を殺す事により毒の効果を知らしめたという。

また、彼は2009年5月以降、合わせて110万ルピー(約190万円)を李玉泉から受け取っていたとされる。

ダラムサラでは2009年1月にも元人民解放軍兵士であり、中国籍の李玉泉がスパイ容疑で逮捕されている。彼はラサの軍高官と連絡を取り合っていた。

参照:5月23日付けTibet Net http://tibet.net/2013/05/23/chinese-espionage-and-terror-plot-against-tibetan-community-exposed/
5月23日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33479&article=Plot+to+poison+Tibetans+in+Dharamshala+foiled%2c+Chinese+spy+arrested
5月24日付けVOAチベット語版http://www.voatibetan.com/content/chinese-spy-arrested-in-dharamsala-/1667107.html
5月23日付けHindustan Times http://www.hindustantimes.com/India-news/HimachalPradesh/Suspected-Chinese-spy-arrested-in-Dharamsala/Article1-1064758.aspx

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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