チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月16日
僧侶作家ガルツェ・ジグメに5年の刑
5月14日、青海省黄南チベット族自治州ツェコン県(རྨ་ལྷོ་ཁུལ་རྩེ་ཁོང་རྫོང་)の裁判所はチベット人僧侶作家ガルツェ・ジグメ(འགར་རྩེ་འཇིགས་མེད་36)に5年の刑を言い渡した。
僧ガルツェ・ジグメは今年1月1日にガルツェ僧院から連行され、その後行方不明になっていた。
詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51776043.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51787599.html
彼は地区で作家、知識人のセミナーを開いたりもしており、影響力のある作家であった。逮捕された直接の原因は直前に出版した雑誌「王の勇気༼བཙན་པོའི་སྙིང་སྟོབས༽」第二部ではないかと思われている。この中で彼は焼身、抗議デモ、ダライ・ラマ法王、チベット亡命政府、チベット人の権利、環境、少数民族と北京の関係等、チベットの現状についての報告を行っていた。
彼は1999年から、文筆活動をはじめ膨大な数のエッセイや記事を発表してと言われる。「王の勇気」第一部を2008年に出版し、その中で2008年蜂起をはじめチベット人の苦しみの状況について詳しく語っていたが、この雑誌が原因で2011年4月、当局に拘束され、その時ひどい拷問を受けたという。解放された後、この脅しにもめげずさらに文筆活動等を続けていた。
2008年以降、チベット人作家、歌手、文化人、知識人、地域に影響力のあるラマ等の拘束・逮捕が続いている。彼らはチベット語でチベットの現状を知らせ、チベット人としてのアイデンティティーを守ることを訴えることが多い。当局は情報封鎖、チベット文化、民族弱体化を目的に彼らを取り締まっているのである。
中国では事実を発表すると逮捕される。メディア等は嘘を書く限り逮捕されない。
参照:15日付けTibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7669
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)