チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月15日
ルチュで土地強制収用に反対し15人拘束、1人病院へ / 福建泉州では同じく土地収用で官民衝突、人質交換 / カンゼとナクチュ各地で焼身者への連帯を示す祈祷会
ルチュで土地強制収用に反対するチベット人15人拘束、1人病院へ
今月5月12日、焼身抗議も頻発した甘粛省甘南チベット族自治州ルチュ県で、土地所有権を主張するチベット人たちに武装警官隊が襲いかかり、15人連行、1人病院に担ぎ込まれた。
当局はチベット人たちが所有を主張する土地を政府の土地であり、売り買いは禁止されている、大人しく引き渡さないと時には強制的に収用すると警告。辺りを鉄条網で囲い「碌曲(ルチュ)県国土資源局所有」という看板を立てた。
これに対し、土地所有権を主張するチベット人たちは「これらの土地は大金をはたいて購入し、長年自分たちが利用し続けて来た土地だ」として、土地の引き渡しを拒否し、土地の上で座り込みデモを行った。
これに対し、当局は5月12日、約200人ほどの武装警官隊を送り込み、デモを行うチベット人を暴力的に追い払った。その際、ダルギェ、ゴンポ・キャプを含む少なくとも15人が連行され、多くのチベット人が負傷したが、その内の1人は重傷を負い病院に担ぎ込まれたという。
参照:5月14日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/chinese-authorities-confiscated-tibetan-properties-in-luchu-05142013142525.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
同中国語版http://www.rfa.org/mandarin/Xinwen/g-05142013164801.html
中国ではチベット地区に限らず、政府の土地強制収用に関わる衝突は日常茶飯事。ではあるが、上記ルチュの事件が起った一日前には、福建泉州でちょっと変わった光景が繰り広げられた。左の写真を見てもらうと分かるが、1人の特殊警官が手を縛られ村人である女性にしずしずと引きずられて行ったというのである。
詳しい事の経緯は中国語がしっかり読めないので分からないが、とにかく5月11日に福建泉州市惠安県東橋鎮で土地収用を巡り、数百人の警官隊と千人ほどの村人が衝突し、村人13人が連行されたが、一方で村人は1人(3人との説も)の特殊警官を人質或は捕虜として確保したという。
そして、その後この1人(又は3人)の警官と連行されていた村人13人が人質交換されたというのだ。
ま、これで、全てが終わったとは思われないので、続報も知りたいところである。それにしても、これがチベットならこんなことをすれば後で村ごと軍に包囲され、恐ろしい結末を迎えるであろうと思われる。漢人相手だとこのようなこともありなのだと驚く。
参照:5月15日付け大紀元http://www.epochtimes.com/b5/13/5/12/n3869046.htm
カンゼとナクチュの各地でサカダワに合わせ焼身抗議者に連帯を示す祈祷会
RFAが伝えるところによれば、カム、カンゼ州とチベット自治区ナクチュ地区の各地で今月10日から始まったサカダワ(チベット暦4月、チベット仏教徒にとってもっとも聖なる月)に合わせ、連日各地の僧院等に地元のチベット人大勢が集まり、これまでチベットのために焼身抗議を行い死亡した人々を追悼し、生き残った人々や焼身者の家族たちへの連帯を示すための特別祈祷会が行われているという。
カンゼ州内のこの種の法会においては焼身抗議者たちだけでなく、先のヤクガ(雅安)地震による犠牲者への追悼も合わせて行われているという。今のところ、当局の介入は報告されていない。
参照:5月11日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/special-prayer-to-self-immolators-by-tibetan-in-kham-karze-05112013143218.html
ナクチュについては15日RFAチベット語放送分より。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)