チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月9日
2月24日に焼身したパクモ・ドゥンドゥップの遺書が伝えられた
今年2月24日にアムド、ツォゴン地区バイェン県(青海省海東地区化隆回族自治県)にあるチャキュン(ジャキュン、བྱ་ཁྱུང་དགོན་པ་、夏琼寺)僧院内で焼身し、その後死亡したパクモ(ラモ)・ドゥンドゥップ(21)が遺書を残しているらしいという話は当初から言われていたが、内容は伝わっていなかった(注1)。
この遺書が最近南インドにいる亡命チベット人クンサン・テンジンの下に届けられた。遺書は最後まで彼の焼身に付き添い、見守ったらしいある友人に託されていた。彼はパクモ・ドゥンドゥップが焼身に至るまでの行動を詳しく報告している。
その遺書:
これまでに、チベットの各地でチベットの自由のために100人ほどが焼身抗議を行っているが、彼らは本当にチベット人の中の真の勇者だ。
チベットが自由と独立を獲得しない限り、チベット人の文化と伝統は中国人により抹消されるであろう。
今年に入りこのバイェン県でもチベット人コミュニティーに対し当局はチベット語を習ってはいけないという命令を出し、チベット語教師を追い出した。本当に悲しいことだ。
今日、農暦(ホルダとも呼ばれるチベット旧暦の1つ)の15日(満月)の夕方、チャキュン僧院の前で私は焼身する。
今日はチベット独立の日だ。
この日彼と行動を共にしていたと思われる友人によれば、パクモとその友人がマチュのドンナンの街で食事を共にした時、パクモはこの遺書を書いたという。村に帰ったあと、商店でスナックとライターを買い、夕方7時頃チャキュン僧院メンパ学堂の売店で灯油2瓶と色付きの紙を買った。
僧院の庭に至る前に彼は灯油の一部を飲み、トルマを捨てる岩のところで色紙に火を付け、「チベットに独立を!チベットには自由が必要だ!ダライ・ラマ法王に長寿を!」と叫んだ。メンパ学堂の焼香場に来た時、残りの灯油を頭から被った。本堂前の広場(問答場)に入った所で、その友人に「タ・デモ(じゃ、達しゃでな)」と声を掛け、火を点けた。炎に包まれながら、叫び声とともに、右往左往した後、倒れたという。
注1:彼の焼身の詳細については:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51781897.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51782129.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51787206.html
参照:8日付けTibet Net チベット語版 http://bod.asia/2013/05/རྒྱལ་གཅེས་པ་ཕག་མོ་དོན་/
同中国語版 http://xizang-zhiye.org/化隆縣帕莫頓珠遺言傳出境外/
8日付け Tibet Timesチベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7651
8日付けRFAチベット語版 http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/phakmo-dhundup-05082013163652.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)