チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年4月30日
獄中24年のロプサン・テンジンが刑期満了前に重病、家族の下に帰される
VOTが29日付けで伝えるところによれば、チベット人政治犯として25年の刑期を受け、もっとも長期間獄中に繋がれていた、ロプサン・テンジンが刑期満了を前に、去年末から「重病に陥った」として家族の下に帰されているということが判明したという。家族の下に帰されるまで彼は24年間獄中にあった。
彼は1988年3月5日にラサで起った大規模デモに参加し、その際、他の5人のチベット人とともに、デモ参加者を撮影していた警官に暴行を加え窓から落とし殺害したとして死刑を宣告された。もっとも、彼やその他5人のチベット人が本当にこの殺害に関与したのかどうかについては疑わしいと思われている。(詳細参照>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51697401.html)
死刑はその後、国際人権機関の強い圧力により無期懲役に減刑され、さらに1994年にその時点から18年に減刑された。今年解放される予定であった。
彼は逮捕されたとき、25歳(22歳との情報もあり)、ラサ大学の学生であった。刑務所内でも抗議デモを先導したり、刑務所を訪れたアメリカ大使に「政治犯リスト」を渡そうとした。そのような抵抗姿勢を見せる度に、もちろんその後激しい拷問を受けている。度重なる拷問と虐待により、彼の健康は損なわれ、腎臓を患い、糖尿病にもなりほぼ盲目状態、足も痛め、立ち上がることも困難な状態と伝えられていた。
刑期終了前に家族の下に帰されたということは、相当悪い状態と思われ、心配されていが、詳しい現在の容態は伝えられていない。
参照:29日付けVOT中国語版http://vot.org/cn/?p=24876
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)