チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年4月29日

ウーセル・ブログ「北京はなぜ工作組を派遣し、僧侶の携帯電話を検査するのか?」

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ウーセルさんは4月13日付けのブログで、「ラサで主な僧院に携帯電話専門家の特別チームが派遣され、全僧侶の携帯電話がチェックされている」というニュースを取り上げ、これはチェックや脅迫の意味だけでなく、同時に全ての個人情報や通話情報を監視するためのバックドア的アプリを仕込むことにより、携帯を「監視役の警察」に変えようとしているのではないかと推測する。このようにして、チベット人にとって携帯電話は「恐怖の化身」になり、「手で触れるだけですぐに災いをひき起す」道具となる。「これは明らかに国家のテロ行為」と言えるものだと批難する。

原文:http://woeser.middle-way.net/2013/04/blog-post_13.html
翻訳:@yuntaitaiさん

◎北京はなぜ工作組を派遣し、僧侶の携帯電話を検査するのか?

_23中国中央テレビ(CCTV)は2カ月前、チベット人焼身に関するプロパガンダ番組を放送した。番組の中では、連座したチベット人の多くがQQやWeChat、電話などのために当局に把握されていた。画像はスクリーン・ショット。

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少し前のRFAの報道(http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shaoshuminzu/dz2-03112013155708.html)によると、北京は携帯電話専門家の特別チームをラサに派遣し、3月8日からデプン僧院やセラ僧院、ジョカン、ラモチェ、ガンデン僧院で、全僧侶を対象にした携帯電話の検査を始めた。ほかの僧院でも数ヶ月以内に順次検査する。携帯電話の中に「国家の安全を脅かす」情報や写真が見つかれば措置が取られ、ひどい場合は逮捕される。

つまり、北京から来た携帯電話検査工作組は、今もラサで僧院ごとに僧侶の携帯電話を調べているということだ。見たところ、こうした大々的な検査方法を幸運にもかわせる僧侶はほとんどいないようだ。

これほど大げさに動いて、ただ「国家の安全を脅かす」情報や写真があるかどうかを調べるだけなのだろうか?ツイッターでニュースを紹介し、私のこの疑問を打ち明けると、すぐに反応が返ってきた。

あるネット仲間は書いた。「工作組の任務は写真を数枚調べるだけじゃないでしょう。(写真などの)問題がなかったとしても、携帯電話にバックドアを組み込める。数枚の写真だけが目的ならネット封殺で十分だし、これだけ大きなエネルギーを費やす価値がありますか?」

別のネット仲間は書いた。「目の前では検査しないでしょう。たぶん検査後、一部の携帯電話に何か付け足している(例えばスパイウェアとか)。特にアンドロイドのユーザーにはね。携帯電話のセキュリティに詳しくない人にとってはかなり危ないよ」

もちろん目の前で検査することはあり得ない。報道によれば、工作組は各僧院で携帯電話を全て集め、4、5日かけて集中的に検査する。そして、この検査は決して僧侶の前では進められない。更に、工作組の行動時には、往々にして完全武装の軍警が一緒に出動するという。通常、僧侶は一間か、二間の僧坊に住んでいる。部屋中をひっくり返すような捜索はないことではなく、2008年3月以降には度々起きている。

私はまた、携帯電話の検査は脅迫目的ではないかと尋ねた。

ネット仲間は書いた。「脅迫のほか、次の一手のために準備をしている可能性がある。特定の地域の携帯電話は必ず登録が必要で、登録してようやくネットに接続できるというように」

3月15日、中国官製メディアの中国新聞網のニュースは伝えた。「中国インターネット・データセンター(DCCI)のリポートによると、スマートフォンのアプリの66.9%はユーザーのプライバシーに関するデータを取得している。このうち、通話とメールの記録、アドレス帳はプライバシー漏洩の3つの危険地帯だ。34.5%のアプリにはプライバシーについて『常軌を逸した行為』があり、アプリ自体の機能に全く関わりのない状況下で、ユーザーの個人情報を取得している。そこにはアドレス帳や通話記録、位置情報、メールの内容など、非常にプライベートな個人情報が含まれている」

スマートフォンにアプリがいったんインストールされれば、通話やメールの記録、連絡先の番号などのプライバシーが監視される。たとえ通話記録やメールをすぐに削除したとしても効果はない。報道が伝える通りだ。「アプリによる読み取りは書き写しのようなものだ。まずデータを読み取って書き写し、ネットにつながった時点でサーバーに送る。携帯電話内の情報を削除しても、全くプライバシー保護の役には立たない」

つまり、国家権力を頼りに、ある地域のあるグループを対象として携帯電話をまとめて集めるのは、検査と脅迫のためだ。より危険なのは、恐らくどの携帯電話にもアプリをインストールし、ユーザーの情報を集め、事情を知らないうちにプライバシー情報を漏洩させるということだ。このように包囲の網を張り巡らせるやり方は、誰もが持ち歩く携帯電話を監視役の警察に変えるに等しい。

これ以前に中国中央テレビ(CCTV)はチベット人焼身に関するプロパガンダ番組を放送している。番組の中では、逮捕され重い刑を受けたチベット人の多くがQQとWeChatで焼身者の情報を送っていた。このため当局に把握され、「厳しい攻撃」に遭ったという。パソコンであれ携帯電話であれ、QQとWeChatは事実上、国家安全部門の「バックドア」だと早くから分かっている。

何年も前、「チベット人の恐怖は手でも触れられる」と形容した人がいた。現在では、携帯電話は恐怖の化身になり、手で触れるだけですぐに災いをひき起こせる。これは明らかに国家のテロ行為だ。国家的な計略に基づいて悪徳ソフトを利用し、更にチベット人を支配するのだ。

2013年3月16日 (RFAチベット語)

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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