チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年4月23日

僧侶が拷問後病院へ、その後家族の下へ/僧侶作家2人長期失踪

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hhhシルカル僧院僧侶が拷問の末、刑務所から病院にその後自宅に

去年9月1日、ジェクンド州ティンドゥ県にあるシルカル僧院に突然大勢の部隊が押し掛け、5人の僧侶を連行した。(詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51760361.html)連行の理由は明かされず、その後、彼らは刑期を受けたが、罪状等は明らかになっていない。おそらく去年2月8日に大規模なデモを行ったことに関係しているであろうと思われている。

この5人の内、僧ソナム・イクネン(45)が、1ヶ月ほど前に、刑務所から西寧で一番大きな病院に移され、その後、家族の元に送られたということが最近判明した。彼は非常に衰弱しており、尋問中や刑務所での拷問が原因と思われている。

彼は2年の刑を受けていたという。家族が1ヶ月毎に許される面会のため3月に刑務所を訪れたとき、彼はそこにいなかった。刑務所側は居所を伝えなかった。その後、彼が西寧の病院に収容されているということが判明し、家族が向かったが、面会は許されなかった。そして、最近突然彼は家族の下に送られたという。彼の容態は非常に悪化しており、家族はこれからまた彼を病院に入院させ、治療を続けさせるというが、回復したとしても、また刑務所に連れて行かれるであろうと心配されている。彼は逮捕される前、非常に健康であり、衰弱した原因は拷問であろうと思われている。

当局はしばしば、拘置所や刑務所内の拷問やひどい扱いにより、重体となった者を、どうしようもなくなり死にそうになると病院に送り込む。また、それでも治療が長引き、費用がかかると判断される時や、或はもう望みがないと判断されると家族の下に送られる。その後、しばらくして家で死亡したというケースがいくつも報告されている。彼の詳細は容態は分からないが、この何れかのケースと思われる。

参照:22日付けVOT中国語版:http://vot.org/cn/?p=24695

作家僧侶2人が逮捕後長期間行方不明

ae8f4158-4272-4c2c-8203-3b923140ca68今年1月1日にアムド、レゴン県にあるガルツェ僧院内から僧侶作家として有名なガルツェ・ジグメ(འགར་རྩེ་འཇིགས་མེད་36/37)が突然連行された。原因は彼がその直前に出版した雑誌「王の勇気༼བཙན་པོའི་སྙིང་སྟོབས༽」第二部ではないかと思われている。この中で彼は焼身、抗議デモ、ダライ・ラマ法王、チベット亡命政府、チベット人の権利、環境、少数民族と北京の関係等、チベットの現状についての報告を行っていた。(詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51776043.html)彼は地区で作家、知識人のセミナーを開いたりもしており、影響力のある作家であった。

RFAチベット語版は彼が4ヶ月近く経った今も行方不明のままであると報告し、家族や友人が彼の安否を非常に心配していると伝える。

参照:20日付けRFAチベット語版:http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/nobody-knows-about-gartse-jigme-04202013150711.html

79f6c453-4da5-4143-a696-e050d6c6c5f9同じくRFAはカム、チャムド、パシュ県出身の僧侶作家ツァワ・ダニュクが2008年3月20日頃に突然僧院から消えた後、現在も行方不明のままと報告している。彼はそれまでに数冊の著書を出版し、その中にはチベットの歴史や政治状況について詳しく書かれていたという。

参照:RFAチベット語:http://www.rfa.org/tibetan/chediklaytsen/khamlaytsen/kham-stringer/tsawa-danug-disappeared-03062013113523.html

折しも、アメリカ政府は数日前、2012年度の各国の人権状況を纏めた報告を発表した。チベットの人権状況についても詳しく報告され、「チベットの人権状況は2012年度急激に悪化した」としている。http://www.state.gov/j/drl/rls/hrrpt/humanrightsreport/index.htm?year=2012&dlid=204195#wrapper

その中「恣意的逮捕、拘束が増加しているのも問題だ。拘束令状と共に警察は法律上、最長37日間その容疑者を拘束できることになっている。その期間中に正式に逮捕するか、解放すべきである。また、警察は拘束の後24時間以内に容疑者の家族や雇い主に連絡すべき事になっている」と記され、これが全く守られていないと批難している。

中国当局は政治的嫌疑でチベット人を拘束した場合、家族にその事を知らせるということはまずない。それは、長期間に及び、1年以上も行方不明というケースも珍しくない。当局は家族や周辺の人々を不安に陥れ、精神的苦痛を与えるためにわざとやっているのである。

上記2人目のツァワ・ダニュクの場合は行方不明になりすでに5年経ったことになる。他にも2008年に失踪したまま、今も生死も分からぬチベット人が大勢いるといわれている。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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