チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年4月21日
チベット各地で暗に焼身者の意志を継ぐ団体が次々発足
昨日4月20日に中国四川省雅安市 蘆山県を中心に起った大きな地震により、大勢の犠牲者が出ている。犠牲者の冥福を祈るとともに、速やかに十分な救援活動が行われることを期待する。この地域はチベット人居住区であるカムへの入り口にあたる山岳地帯である。ここを通るダルツェド、カンゼに通じる幹線道路も閉鎖された可能性が高いと思われる。RFAによればカンゼ自治州一帯も相当に揺れたらしく、これまでにカンゼ県で3人、ダルツェド県で2人の犠牲者が出たことが確認されているという。カンゼでも死者が出るぐらい揺れたとすれば、震源地により近いラガン、タウ、ダンゴ等でも被害が出たと思われるが、詳細な報告は未だ入っていない。
追記:RFAはカンゼで3人と書いているが、中文「四川新聞http://scnews.newssc.org/system/2013/04/21/013765090.shtml」によれば、「カンゼ州で5人死亡、カンディン県で2人、泸定县で3人」となってる。これだと、カンゼ県で死者が出た訳ではないことになる。
今日は最近、チベットの各地に広まっている市民団結運動について報告する。先の4月9日のブログで「カム、ダンゴ県で『雪域非暴力勇者協会』という会が発足し連帯を誓い合った」http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51786184.htmlというニュースを知らせたが、同様の団体の発足を知らせる写真がFBに幾つか流れていた。
まず、今年1月7日にはカム、ザチュカにあるランヤク僧院に地域の有志が集まり、同じく「雪域非暴力勇者協会」を発足させたという。この「雪域非暴力勇者協会གངས་ལྗོངས་འཚེ་མེད་དཔའ་བོའི་མཐུན་ཚོགས་」の趣旨はチベットのために焼身した人々の意志を受け継ぎ、チベット人同士の団結、アイデンティティーの保持、盗みや喧嘩をしない事を誓いうというものである。
同じく1月24日付けでアムド、ンガバにあるツィナン僧院で同様の協会発足を知らせる写真が伝わっている。日付からすると、ザチュカが最初のように思われるが、実際にはどこか他の地域で先に同様の協会ができた可能性もあり、どこが最初かははっきりしない。
また、最近アムド、ゴロ、ラギャ僧院でも地域のラマの呼びかけにより、団結を誓い合う協会が発足したという。もっとも、こちらは政治的な色彩はできるだけ排除し、チベット人の良き特質である、慈悲に基づいた助け合いの精神を向上させ、とにかく、悪い行いである、盗みや喧嘩、賭け事を断つことが誓われたという。この集会は地方当局の許可を得て行われたとされ、同様の集会がゴロの数カ所でも行われたという。
4月18日にはアムド、マチュで環境問題を中心にした「故郷愛護協会」の僧侶たちがゴミ収集等の活動を行ったという。この協会はすでに数年前に発足し、地域のチベット人の団結とチベット語保持、チベット文化保存、環境保全を目的とし、善行をおこない、悪行をさけることが唱えられているという。去年からこの運動に参加する人が増えているという。
このようにして、チベット各地で政治色を前面に出さない団体を組織しようという動きが広まっているということである。この背景には焼身者たちの遺言の反影を見る事もできると思われるが、それを表に出す団体もあるし、そうでない団体もあるということである。当局の反応については報告されていないので不明である。
参照:地震については、20日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/earth-quake-killed-157-people-in-china-04202013154210.html
マチュについては、19日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/environment-protection-in-amdo-04192013111427.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)