チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年4月7日
2008年3月10日、ラサ・ツクラカン前でデモを行い逮捕されたセラ僧院僧侶2人が解放されるも1人は即入院、もう1人は精神異常
2008年3月10日、この日ラサ近郊にあるデブン僧院の僧侶数百人が中国政府のチベット圧政に抗議するためラサに向かい平和行進を始めた。彼らは途中部隊に阻止された。同じ日、ラサのツクラカン前では14人のセラ僧院僧侶がチベット国旗を掲げ、チベット独立を要求するデモを行った。彼らは全員逮捕され、その後全員2~10年の刑を受けた。
この二つのデモがきっかけとなり、その後ラサでは14日に市民数千人が参加する大規模な全面蜂起が起こり、これに対し当局が武力鎮圧を行い、数百人が死亡した。そして、このニュースがチベット各地に伝わると、カム、アムドを中心に150カ所で同様の中国の圧政に抗議するデモが発生し、多くのチベット人が殺され、数千人が逮捕された。これが所謂2008年蜂起である。
6日付けTibet Timesは、このツクラカン前のデモに参加し逮捕され、5年の刑期を受けラサ・チュシュル刑務所に収監されていた2人の僧侶が今年3月10日に解放されたというニュースを伝えている。
解放されたのはカム、カンゼ州セルシュル県ウォンポ僧院僧侶でそのときセラ僧院で学んでいた僧ロプサン・ンゴドゥップと同じくミンゲ僧院僧侶でセラ僧院で学んでいた僧スパである。僧ロプサン・ンゴドゥップは解放され故郷に辿り着いたが、非常に衰弱しており、すぐに青海省西寧の病院に運ばれ、今も入院中という。また、僧スパは精神に異常をきたしているという。拘束時や刑務所内での拷問の結果と思われる。
左の写真は3月10日に逮捕されたセラ僧院僧侶14人の顔写真である。この内僧ロトゥは10年の刑を受け同じくチュシュル刑務所に収監されていることは確認されているが、その他僧侶の刑期は2年から10年と言われているだけで個別には確認されていない。その他、同じチュシュル刑務所には3月蜂起の時逮捕され10年の刑を受けた僧ソナム・ダクパと俗人ダシャルがいるという。
このデモを目撃した少女の証言
左の絵は2008年3月10日、ラサ・ツクラカンの前にいて、セラ僧侶たちのデモを目撃し、自身も少し一緒に叫んだという当時16歳の少女ガワンが描いたものである。彼女はその後、すぐにインドに亡命した。私が彼女に会い、話を聴いたときに描いてもらった絵である。みんな笑顔なのが泣ける。
以下彼女の話:
ガワンは故郷から三月初めに送りだされ、ラサのラモチェにいる伯父さんのところに身を寄せながら、インド行きを待っていた。3月10日、彼女は丁度その日、現像した写真を受け取るためにパルコルに行った。
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写真を受けっとった後パルコルを廻っていた。
そのうちあたりの人々が騒ぎはじめた、「セラの僧侶二人が<チベット独立>を叫んで、捕まった!殺されるぞ!」
と誰かが叫んでた。
みんながその僧侶が連れて行かれたという派出所に向かった。
みんなが<チベットに独立を!><ダライラマ法王に長寿を!>と叫び始めた。
どんどんチベット人が集まってきた。
ものすごい人がいて、みんなが<チベット独立!(プーランツェン)>と叫んでた。しばらくすると、30~40台の軍隊のトラックがジョカンの前に現れて、大勢の軍隊がデモ隊に迫ってきた。
小競り合いはあったが、蹴散らされ、徐々にチベット人は減り始めた。
顔が血だらけになった女の人を見た。かなりの人たちが軍隊に殴られていた。自分たちも2時ぐらいにはラモチェの家に帰った。でもその時にもまだ半分ぐらいのチベット人はそこで叫んでた。
その日も次の日も伯父さんから外に出ないようにと言われたので外のことは全く知らない。
12日の朝、国境行きのトラックに乗った。
途中夜に山の中を何時間か歩かされた。
検問を抜けるためだと言われた。
14日、夜国境の手前で下ろされ、山を歩き、川にかけられたロープを伝ってネパール側に渡った。
カトマンドゥの一時収容所に着いた時には安心し嬉しかった。
詳しくは過去ブログ:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51040582.html と
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51254577.html
参照:6日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7540
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)