チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年4月3日

法要なく秘密裏に火葬された僧ドゥプツェの49日法要

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392663_10151556128763729_611200565_n今日4月3日はネパールのカトマンドゥで2月13日に焼身抗議を行い、死亡した僧ドゥプツェ(ドゥプチェン・ツェリン 25 http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2013-02.html?p=2#20130213)の49日であった。チベットでは日本と同じように死者は49日以内に次の生を受けると信じられており、49日目には必ず法要を行う。特に彼の場合、カトマンドゥの病院で死亡した後、チベット人側の遺体引き渡し要求にも関わらずネパール当局が保持し続け、ついに先月25日、誰にも付添われず、何の法要も行われることなくネパール警察により秘密裏に火葬されたというので、今日49日の法要を行うことは死者にとって非常に大事なことと見なされた。

DSC_2273ダラムサラでは朝9時からツクラカン傍の勇者の塔の前に僧侶、一般人100人ばかりが集まり、11時頃まで法要が行われた。カトマンドゥにおいてもチベット人たちが法要を行おうとしたが、当局は許可しなかったというが、実際にどうなったかは未だ不明。

今日のダラムサラでの法要は地区チベット青年会議、地区チベット女性協会、インドSFTの主催だったが、インドSFT代表のドルジェ・ツェテンはスピーチで「ドゥプチェン・ツェリンの遺体を引き渡してくれるよう、多くの国際機関(日本のSFTも)がネパール政府に要請したが、ネパール政府は全てを無視し、秘密裏に彼を火葬した。これは中国政府の差し金だ。今日はダラムサラだけでなく世界各地で彼のための法要が行われ、また中国政府とネパール政府への抗議も行われている」と述べた。

ちょうど、アメリカのノーベル平和賞受賞者でもある元大統領ジミー・カーター氏が4月1日にネパールを訪問した際、「中国政府がネパールに対し、亡命チベット人の入国を妨害するよう圧力をかけている」と述べ、ネパール政府に対し、亡命チベット人への妨害を求める中国の圧力に屈さないよう呼びかけた、という記事が日本語でもでたところである。http://jp.reuters.com/article/jpchina/idJPTYE93104K20130402

このところネパール政府はますます、中国の属国化の度合いを増しているようである。

DSC_2279ところで、僧ドゥプツェは焼身する3週間ほど前に当たる1月21日にチベットからネパールに入り、カトマンドゥの難民一時収容所に滞在していた。彼は亡命者として秘密裏に越境したのではなく正式なパスポートを持ってネパールに入っていた。また、インドに早く行きたいと事務所側に申し出ていたともいう。彼が焼身する目的で故郷を離れ、できればインド内で焼身したいと思っていたことは明らかであろう。

なぜ、インドやネパールで焼身することを選んだのかと推測すれば、それはチベット内部で焼身するより、焼身の事実が明白に外国に伝わり、また、周囲に迷惑をかけることも少ないであろうと判断したからではなかろうか?できればインドで焼身したかったというのは、ネパールで焼身した場合、今回実際に発生したような問題が予測されたからであろう。

DSC_2269ネパール政府は遺体は親族にしか手渡せないと言った。彼の父親はセルタ県内にある僧院のトゥルクである。事件が発生した後、中国政府は父親を始め親族を厳重な監視下に置き、もちろんネパールへ行くためのパスポートを与える事は決してなかったということだ。父親のメッセージなどもまったく伝わっていない。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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