チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月25日
父母が焼身抗議により亡くなった子供たちへの連帯を示す子供たちによるデモ
昨日、3月24日にザムタンで4児の母親であるケル・キが焼身、死亡したことを受け、今日ダラムサラでは街の小学生たちが、焼身抗議により父母を失った子供たちへの連帯を示すためのデモを行った。
参加したのは、ダラムサラのマクロード・ガンジにあるニマ・ロプタ(Day School,TCV分校)に通う6~11歳の子供たち約100人。主催は地区チベット女性協会。
ケル・キの棺を模した箱が子供たちにより担がれ、ニマ・ロプタを出発し、街を3周した後、ツクラカン(メイン・テンプル)の傍にある雄者の塔の前まで歩き、そこで集会を開いた。
「神妙に歩くんだよ。ふざけたり、笑ったりしないように」と言われていたはずだが、もちろん子供たちはお互いちょっかいだしたり、道行く人にちょっかい出したりしながら、それでも大きな声で「発菩提心」の一節を唱えながらしっかり歩いた。
黙祷の後、ものすごく大きな声で「ツェメーユンテン(真理の言葉)」を歌う。
これまでに焼身したチベット人の内、子を持つ母親は8人、子を持つ父親は18人である。例えば去年3月4日にンガバで焼身、死亡したリンチェンには1歳から13歳までの4人の子供がいたが、父親は一年前に死亡しており、残された4人の子供は完全な孤児となってしまった(http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51733091.html)。その他、片親を焼身で失った子供の数はおそらく40人以上と思われる。
残された子供たちは親族により育てられ、地域の人々もできるだけの支援は行っているとは思うが、突然父母を失った子供たちの悲しみは長期に渡り癒やされることはないであろう。
集会でニマ・ロプタの女性校長さんは「焼身抗議を行ったお母さんやお父さんは、子供たちを愛してなかったわけじゃ決してない。ただ、子供たちのことより、チベット人全ての方が大事と思ったのだ。残す子供たちも、きっと将来チベットを解放するために働いてくれると信じていたに違いない。ここにいるみんなも国を失った子供たちだ。必ず、いつかチベットに帰るために、将来働こうと思わないといけない。分かったね」と話す。
最後に校長さん、拳を振り上げ「プー・ランツェン・ツァンマ・イン(チベットの完全独立を)!」「プー・ギェロ~~(チベットに勝利を)!」と勇ましく雄叫びを上げ、子供たちも唱和。
(え、先生、「中道を!」って言わなくていいの?)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)