チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月9日
ウーセルさん自宅軟禁 「国際勇気ある女性賞」授賞式に出席できず 中国政府アメリカを批難
「国際女性デー」である昨日3月8日、アメリカ政府国務院では国務長官ジョン・ケリー氏とファーストレディー、ミッシェル・オバマ女史をスピーカーとして「国際勇気ある女性賞」の受賞式が行われた。
この受賞式のビデオ
受賞者9人の中には去年12月にデリーで集団レイプに遭い、死亡したNirbhaya(仮名)も含まれていた。彼女はもちろん死亡しているので出席ということはないが、その他、10年の刑を受け服役中のベトナム人ブロガーTa Phong Tan、潜伏中のシリア人人権弁護士Razan Zeitunah、そしてチベット人ツェリン・ウーセルの3人が出席できなかった。
ウーセルさんはこの賞を受賞したからというより、その前から北京で所謂「両会」が開かれているというので、20日間自宅軟禁されるであろうと言われている。在中国アメリカ大使館は彼女がこの受賞式に出席できるよう、パスポートを発行するようにと中国政府に圧力をかけたといわれているが、まったく効果はなかったようだ。また、この日、北京のアメリカ大使館で彼女を呼んでパーティーを開こうという計画もあったというが、彼女は結局この日も自宅から外に出ることができなかった。
ケリー氏はスピーチの中で「ウーセルさんは自宅軟禁されており、この式に出席することができなかった、、、彼らの問題は自分たちの問題でもある」と語った。
写真はウーセルさんが自宅アパートのベランダに出て、ロイター記者に向かって手を振っているところである。
ウーセルさんはVOAに対し、この賞を受賞したことに関しコメントを寄せられている。その中「私は今自宅軟禁されており困難な生活を強いられている。しかし、100人以上のチベット人が焼身したことを思えば、私の困難など何でもないことだ。彼らは焼身することにより弾圧に抗議しているのであるから、私が筆を置くことなど考えられず、自由への闘いを決して止めない。私はアメリカ政府に対し感謝するが、この賞を焼身抗議を行った100人以上のチベット人と彼らの父母、兄弟、妻、夫、子供たちに捧げる。大変残念なことに、この賞を頂くためにアメリカに行くことができない。しかし、アメリカ政府が100人以上のチベット人が焼身している事実に対し憂慮を示して下さったことに感謝の意を示したい」と語られている。
中国政府はウーセルさんにこの賞が与えられたことに対し、いつもの**の一つ覚えで「中国への内政干渉」と批判し、アメリカ政府に「強烈な不満と断固たる反対」を伝えたそうだ。中国のそのような態度がこのような賞が彼女に与えられる主な原因になっていると知らない訳でもあるまいが、だ。
参照:9日付けウーセルブログhttp://woeser.middle-way.net/2013/03/2013_9.html
6日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/award-03062013194243.html
5日付けVOAチベット語版http://www.voatibetan.com/content/us-recognizes-tibet-writer-woeser-/1615494.html
8日付け時事通信http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013030801039
8日付けBibliObsフランス語版http://bibliobs.nouvelobs.com/web-side-stories/20130308.OBS1335/une-poetesse-tibetaine-privee-de-son-prix-international-femme-de-courage.html
9日付けVOT中国語版http://www.vot.org/?p=23224&utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=%25e5%2594%25af%25e8%2589%25b2%25e7%258d%25b2%25e5%258b%2587%25e6%25b0%25a3%25e7%258d%258e%25e5%25a4%2596%25e7%2595%258c%25e7%25b5%25a6%25e4%25ba%2588%25e8%2582%25af%25e5%25ae%259a%25e4%25b8%25ad%25e5%2585%25b1%25e5%258d%25bb%25e5%258a%25a0%25e5%25a4%25a7%25e7%259b%25a3%25e6%258e%25a7
追加:NTD TVニュースビデオ ウーセルさんへのショートインタビューも
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)