チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年2月22日

チベット歴正月の前日チャムド地区の2カ所で抗議デモ 合わせて12人逮捕/ラサで携帯に焼身者の写真 2年の刑

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imageマルカムで僧侶たちが決起 6人逮捕

ロサ(チベット歴正月)前日の2月10日、チベット自治区チャムド地区マルカム県ポンパ郷ダクディプ僧院(སྨར་ཁམས་རྫོང་སྤོམ་པ་ཤང་བྲག་རྡིབ་དགོན་པ་芒康县莽岭乡扎丁寺)の僧侶たちが「ダライ・ラマ法王のチベット帰還とチベットの独立を求め」抗議デモを行った。当局は直ちに部隊を派遣し、デモを行った僧侶全員を拘束した。

現地から報告を受けた在アメリカのマルカム・ダクパがRFAに伝えたところによれば、「僧院内の民主管理委員会は20人を越える僧侶たちへの政治的再教育を始めた。このことが僧侶たちの生活を困難にさせた。そして、ロサの前日僧侶全員が抗議デモを行い、全員拘束された」

その後「2月13日には、僧侶たちが拘束されたことを知った地域のチベット人たちが、僧侶たちを解放することを求め抗議デモを行った。これにより、6人を除きその他の僧侶は解放された。現在マルカム一帯には大勢の保安部隊が展開し、緊張が高まっている」という。

同じ事件を伝えるVOTは、ダラムサラ在住のマルカム出身の亡命チベット人が現地から受けた情報を伝えているが、その中、「毎年年末には地区の僧院でシャーマンによる踊りと神託が下される儀式が行われるが、今年はこれが当局により阻止された。これに反発して僧侶たちが抗議デモを行い、ダライ・ラマ法王帰還とチベット独立を訴えたのだ」

「このデモは平和的なものであり、基本的には宗教の自由を求めるものだったが、当局は大量の警察と軍隊を派遣し、僧侶はめった打ちにされ逮捕されたのだ」という。情報網が遮断され、現在僧侶たちの姓名や居所は伝わっていない。

VOTによれば、この僧院は地区でもっとも古いサキャ派の僧院で僧侶は約400名という。

マルカムでは去年8月15日に、住民千人ほどが地区の鉱山開発に反対する抗議デモを行ったが、この際当局がデモ参加者に向かって無差別発砲したことにより、チベット人1人が死亡している。詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51758090.html

参照:19日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/arrest-02192013200418.html
20日付けVOT中国語版http://www.vot.org/?p=22488
21日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7359
21日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33076&article=Six+Tibetan+monks+detained+for+pro-independence+protest+on+Tibetan+new+year+eve

ゾガン県で住民が抗議デモ 3人骨折 6人逮捕

同じく2月10日、チャムド地区ゾガン県メユル郷(མཛོ་སྒང་རྫོང་སྨད་ཡུལ་ཤང་)の庁舎前で一群のチベット人住民が「宗教の自由を!」と叫び、また庁舎の壁に「チベット独立」と書かれた張り紙を貼った。

次の日、ゾガン県から大勢の警官と軍隊がメユル郷に押し掛け、デモに参加したとして6人のチベット人を逮捕した。その際、部隊は激しい暴力を振い、2人が肋骨を折られ、1人が腕の骨を折られたという。

追記:RFAによれば、住民デモの原因は当局が正月を前に家々の屋上に中国国旗を掲げることを強要したからだという。住民はこれに反発し、「配られた中国国旗を破り捨て、踏みつける者もいた。懐柔のために配られたソーラーパネルを壊す者もいた」という。

参照:21日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7359
22日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/detain-02222013163235.html

上記2件と19日のンガバにおける2人の焼身を伝える時事通信の21日付け記事:http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013022100800
上記2件を伝える共同通信>産経21日付け記事:http://sankei.jp.msn.com/world/news/130221/chn13022113090006-n1.htm

携帯から焼身者の写真が見つかり2年の懲役刑

去年11月初めに行われた十八党大会を前にチベット全土で当局による警戒が厳しくなっていた。ラサにおいても市内の至る所に検問所が設けられ、携帯等のチェックが厳しく行われていた。

そんな中、10月21日、ラサのモスクの近くで検問されたガワン・トプデン(་ངག་དབང་སྟོབས་ལྡན་20)は滞在許可証等は全て持っていたが、調べられた携帯の中に焼身者の写真2枚とチベット国旗、当局がチベット人に暴力を振っている写真を入れていることを見つけられた。

00-03ngawangガワン・トプデン

彼はまずラサ警察で3日間尋問された後、グツァ刑務所で7日間の尋問を受けた。そして、民族の統一を乱し、政治的デマを流したとして正式に逮捕され、最近2年の懲役刑を言い渡され、現在トゥルン・ションパ・ラチュ近くにある刑務所に収監されているという。

彼はチベット自治区チャムド地区ジョンダ県カルガン郷(བོད་རང་སྐྱོང་ལྗོངས་ཆ་མདོ་ཁུལ་འཇོ་མདའ་རྫོང་མཁར་སྒང་ཤང་)の出身であり、3年前からラサでタンカ(チベット仏画)の勉強を行っていた。

家族は彼が刑期を受けたということは友人から知らされて知っているが、正確な罪状や刑期、裁判がいつ行われたのか、現在の健康状態等は当局から一切知らされていないという。

彼が収監されている刑務所を訪問した他の受刑者の家族によれば、この刑務所には彼の他、チャムドやナクチュ出身のチベット人政治犯が2、3年の刑を受け大勢収監されているという。

参照:21日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/Tibetan-sentenced-for-keeping-photos-02212013144916.html
21日付けTibet Post 英語版http://www.thetibetpost.com/en/news/tibet/3229-a-tibetan-sentenced-to-two-years-in-prison-for-mobile-photos
22日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7358

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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