チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年2月14日

チベット人が独立100周年を記念

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130213030917A2ダライ・ラマ13世

昨日、ダライ・ラマ13世がちょうど100年前に「独立宣言」を行ったとして、世界の各地でチベット人たちがこの歴史的記念日を祝すイベントを行った。

ところで、ダラムサラ等ではダライ・ラマ13世がこの宣言を発表した日付を西暦1913年2月13日とするが、日本のダライ・ラマ東京代表事務所は2月14日としている。チベット歴では「水牛年の1月8日」とされている。

ダライ・ラマ13世が満州国のチベット侵攻を受け1910年~1912年まで英領インドに亡命を余儀なくされた後、1911年に清朝が崩壊した後にラサに戻り、清朝の残存兵をチベットから追い出した後この宣言を発表した。文中には確かに一度だけ「独立」という文字が記されている。「仏法に則った平和な独立国家であるので…」と書かれている。しかし、13世はこれ以前、例えば元や清からの政治的影響を受けていた時期においてもチベットが独立を失ったとは一度も考えておらず、この宣言を「独立宣言」として他国への承認を求めたということもなかった。

この辺の事情は14日に石濱先生が詳しく話されることと思われるので、興味がある方は講演会にお越し下さい。今日の講演会>http://www.sftjapan.org/nihongo:independence100

130213030646Z5石濱先生が翻訳された宣言の全文を以下で読むことができる。>http://shirayuki.blog51.fc2.com/blog-entry-652.html

一方、中国は今週、新華社ニュースの中で「そのような宣伝は茶番である」と、1913年の宣言は「後から作られたものであり」、チベットの独立などは「神話」に過ぎない、と述べた。「清朝が崩壊した後の全ての中国の政府はチベットを国内の領土と認識してきた」という。新華社英文記事>http://news.xinhuanet.com/english/indepth/2013-02/11/c_132164172.htm

これに対し、インディアナ大学のチベット学者Elliot Sperlingは、「ダライ・ラマ13世が中国からの独立を唱えた時、チベットには清朝のなければ、他の如何なる中国当局というこのも存在しなかった」と言う。

何れにせよ、ダライ・ラマ13世の率いるガンデンポタン政権はこの宣言の後、軍隊を強化し、貨幣と切手を発行し、独自の憲法、徴税システム、行政システムを敷き、中国共産党に侵略されるまでの約40年間完全な独立を維持し続けたのだ。

亡命側の各NGOはこの日を記念する各種のイベントを行った。独立を主張するTYC(チベット青年会議)はデリーで「第4回ランツェン(独立)会議予備会」を開いた。この会議はこれから今年終わりに開かれる本会議を前にこれからもヨーロッパ、台湾、北アメリカで行われるという。さらに、TYCはこの会議とともに、チベットの国家性を示すための文章、遺品、写真展を開催した。

TWA(チベット女性協会)は「誰も書き換えることのできない歴史的真実を確認する」として、56の支部でこの独立宣言の原文コピーを表示するという。

rangzen-dhasa-3ダラムサラではSFT(Student for Free Tibet)が主催するイベントが一日中行われた。まず、朝方長さ3m余りの布に印刷された「独立宣言」とチベット国旗を掲げた2頭の馬を先頭に街でパレードが行われた。その後、マクロードにあるTCV分校のホールで「チベット独立展」が開かれ、これに引き続きトークが行われた。夕方にはTIPAで「シャパレ」というヒップポップ曲で有名となったチベット人ハーフKarma Emch氏を招いたコンサートが開かれた。

「中国政府がチベット人の抵抗をあらゆる手段を使って潰そうとしている今、この1913年のチベット独立宣言は我々のスピリッツをリフレッシュし、ビジョンを固め、チベット人の自由を獲得する闘いを強化する」とSFTは述べる。

以下にアクセスすれば、ShapaleyさんことKarma Emchくんの新曲「メイド・イン・チベット」を@uralungtaさんの歌詞翻訳と共に楽しめる。>http://lung-ta.cocolog-nifty.com/lungta/2013/02/20130201.html

参照:12日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/marked-02122013154150.html
13日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tibet-independence-day-02132013155357.html
12日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33027&article=Tibetans+to+mark+100+years+of+Independence+Proclamation

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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