チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年2月14日

ンガバで2月3日に焼身・死亡した僧侶がいた

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1-Lobsang_Namgyaロプサン・ナムギェル

ダラムサラ・キルティ僧院が2月13日になり、やっと入手することができた情報によれば、それより10日前の2月3日現地時間早朝6時頃、ンガバ・キルティ僧院の僧侶ロプサン・ナムギェル(བློ་བཟང་རྣམ་རྒྱལ་)、37歳がンガバ州ゾゲ県(མཛོད་དགེ་རྫོང་)ゾゲの警察署近くで中国政府のチベット政策に抗議するために焼身を行い、その場で死亡したという。

彼は焼身しながら「ダライ・ラマ法王に長寿を!」と叫び、警察署に向かって走ったが途中で倒れ、その場で死亡した。警官はその場で彼が残したと思われるバッグを見つけたという、その中には身分証明書と手紙が入っていたと言われる。しかし、その手紙に何が書かれていたかは今も分かっていない。

遺体は当局に奪われ、直ぐに火葬にされ、遺灰のみが家族に渡された。

去年の9月、彼が突然2週間失踪するという事件があった。その時にはクラスの同級生や家族が非常に心配し、日夜彼を探しまわったが見つからなかったという。後になり彼がその時ンガバ警察により連行されていたことが判明した。警察は彼に様々な脅しをかけ、僧侶でないと言うことを強要され、僧院に通うことが禁止された。また、警察は彼が娼館にいたところを拘束したのだと広言した。

その後、彼は数ヶ月間遊牧地帯にいる兄弟や友人のとこを巡って過ごした。しかし、彼がどこに行こうと警官が付きまとい、監視され、様々な嫌がらせを受け続けた。彼は焼身を行う前にンガバ・キルティ僧院に現れ、「今から他の土地に厄払い(浄化)を行うために行く」と言い残していたという。

彼が焼身した後、残された家族、兄弟の電話や行動は当局により厳しく監視されているという。弟の僧ロプサン・サンゲは兄の焼身後数日間拘束された。

ロプサン・ナムギェルはンガバ県チャルワ郷チュクレゴンマ(རྔ་པ་རྫོང་གཅའ་རུ་བ་ཡུལ་ཚོའི་ཕྱུགས་ལས་གོང་མ་)の出身。父カルコ、母カルキの息子。彼は幼少の時からンガバ・キルティ僧院の僧侶となり、最近は勉学の最終段階である倶舎論の2階級目に入っていた。彼は品行方正でクラスや討論にまったく休みなく参加し、特にその態度は他の僧侶たちの見本とされるほどであったという。

内地焼身者102人目、死亡確認85人目。亡命政府発表では彼が100人目となる。13日のネパールの焼身を含めれば、98年以降の内外合わせた焼身者の数は108人となった。

参照:13日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7314
13日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/selfimmolation-02132013100700.html

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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