チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年1月2日
ダラムサラより謹賀新年!
井早智代さんの絵「ダライ・ラマ法王を先頭に亡命チベット人たちが帰還できる日が来た」
ཕྱི་༢༠༡༣ལོའི་གནམ་ལོ་གསར་པར་བཀྲ་ཤིས་བདེ་ལེཊ་ཕུན་ཚོཊ་འཕེལ་པ་དང་།བགྱི་དོན་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པའི་སྨོན།
西暦新年あけましておめでとうございます!今年一年、皆様にたくさん良いことがありますように!依願成就の年になりますように!昨年中このブログを閲覧して頂きまして本当にありがとうございました。今年もよろしく。
去年一年のチベットを振り返れば、非暴力の誓いを守り抜き、高らかに自由への叫び声を上げ、或は銃弾に倒れ、或は自ら放った炎に包まれ倒れた、多くの勇敢な人々の姿が浮かぶ。カム中心に、年の前半に起った大規模な抗議デモに対し当局が無差別発砲した故に10人以上のチベット人が死亡した。年の後半にはアムドを中心に焼身抗議の大きなうねりが起こり、11月中だけで28人もの人が焼身。去年一年間の焼身者の数は内外合わせ85人、09年からの累計はちょうど100人となった。これは世界の歴史上前例のない抗議の焼身と思われる。
このような、文字通り捨て身の最終的手段による訴えにも関わらず、中国政府は耳を傾けるどころか、弾圧を強化し、焼身者の家族まで逮捕するという冷酷な反応を示している。焼身の原因は中国政府の卑劣な植民地政策であることは明白であるのに、全ての原因を外に求めダライ一味の煽動と決めつける。
これは例えば、土地と家を丸ごと盗むために、人の家に押し入った強盗が狼藉の限りを尽くし、その家の人々が逆らえば、暴力を振い、銃を突きつけ、抗議の声を上げれた者を撃ち殺しているのに等しい。回りの家族にこの悲劇を伝える最後の手段にと、自らの身体に火を放つと、これを外に逃れた家長が唆したのだと主張し、自分の非をまったく認めようとしない。また、外の人々はこの強盗との商売があるのでと、強盗の非道を止めようともしなければ、非難さえしない、という状況である。
チベットの子供たちが雪の上にハートマークの中「བོད་པ། プパ(チベット人)」という人文字を描く。
今年、チベットで何が起るのか予想することはできない。悲し過ぎる焼身はもう起らないでほしいと思う。焼身などがなくても、デモがなくても、チベットの人たちが中国により厳しく弾圧されて続けているのだということを世界の人々が知り、その状況を変えるために中国に働きかけることができるよな環境を作りたいと思う。
今年一年も中国が隠し続け、虚偽の情報を流し続ける限り、チベット人に対する人権弾圧の実体を告発し続けるために、チベットから命を掛けて漏れ伝えられた貴重な情報を日本の皆さんに伝え続けるつもりだ。
愛すべきチベット人たちが、真の自由と幸福を手に入れることができる日を夢みながら、彼らを応援し続けて下さることを願う。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)